【3月25日 AFP】香水の調香師やワインのソムリエなどが持つ「飛び抜けた嗅覚」は、生まれつき備わった能力ではなく、プロとしての長年の経験の末に獲得したものだとするフランスの研究結果がこのほど、脳医学会誌「Human Brain Mapping」に掲載された。
 
 経験の浅い調香師とベテラン調香師を対象に行った実験で、数百から数千もの異なる匂いをかぎ分ける能力が、ほぼ全面的に厳しいトレーニングによって培われるものであることが明らかになったという。

 実験対象となったのは、経験35年以上のベテラン調香師28人と、調香師学校の生徒28人。2種類の実験が行われ、ひとつは標準的な化学物質300種類のなかから選んだ数十種類の匂いを特定するもの。もうひとつは化学物質の名前から、その匂いを想像する実験だった。ベテラン調香師と生徒、どちらのグループも好成績をあげたが、より速く正確だったのはベテラングループで、特に二つ目の匂いの記憶に関する実験で、その傾向が目立った。

 さらに、研究者たちを驚かせたのは、脳内スキャン観察の結果、脳内の活動領域が二つのグループで異なっていたことだった。生徒のグループでは、意識的な知覚をつかさどる前頭葉に活動が集中していたが、ベテラングループでは、記憶の想起や心的イメージをつかさどる海馬傍回でニューロンの活発な動きがみられた。

 また、訓練を続けるうちに、嗅覚を機能させる脳内活動が、意識的な活動をつかさどる部分から、呼吸や嚥下など自動的身体機能をつかさどる領域に、徐々に移動していくことも明らかになった。

 それまでの研究では、音楽家やスポーツ選手の継続的なトレーニングが脳内活動を変化させることは知られていたが、匂いをかぎ分ける能力である嗅覚についての同様の研究はなかった。

 研究チームの1人、クロード・ベルナール・リヨン第1大学(Universite Claude Bernard Lyon 1)の神経科学者ジャン・ピエール・ロワイエ(Jean-Pierre Royet)氏は、「ピアニストがスケール(音階)練習で上達していくように、『鼻利き』になるためにもトレーニングが必要ということだ」と説明している。(c)AFP

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