【3月1日 AFP】HIVの感染リスクを減少させることが知られていた女性が性行為の前に使う膣用ジェルが、直腸でもHIV感染の抑制に効果があることが分かった。

 米ボストン(Boston)で28日に行われた医学会議で報告した米カリフォルニア大学(University of California)とピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)の共同チームによると、抗ウイルス薬テノフォビル(tenofovir)が含まれている膣用ジェルを直腸に使用した初の治験でこの結果が明らかになった。

 試験規模は小さく、被験者は最近性行為を行っておらず、HIV検査で陰性の男女18人で、1週間、直腸にジェルを塗ってもらった。その後、直腸組織を採取して研究室でHIVに接触させ、感染が妨げられるかどうか観察した。この結果、「1週間の試験の後、偽薬を使用した被験者と比較して、テノフォビル入りのジェルを使った被験者から提供された組織サンプルでは、HIV感染が著しく抑制された」と報告された。

 論文の主著者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)予防研究センター所長のピーター・アントン(Peter Anton)氏は「テノフォビル入りジェルを直腸に局所的に塗布した場合、確実なHIV予防になるかもしれないという発見は、勇気づけられる結果だ」と語っている。一方、テノフォビルの経口薬では予防効果は見られなかった。

 別の研究で、米国、ウガンダ、南アフリカの144人の女性に、経口薬とジェルを使用してもらった後に膣内組織を比較した例では、ジェルを使用した場合の方が、テノフォビルの組織中濃度が100倍高かったという結果が出ている。

 世界のHIV感染者の3分の2に上る2250万人の感染者がいると推計されるサハラ以南のアフリカでは感染者の約6割が、男性とのコンドームを使わない性行為によって感染した女性だ。このため、コンドームよりも、女性が使用を決定しやすいジェルや経口薬によるHIVの感染予防に期待がかかっている。(c)AFP

【関連記事】HIV感染防ぐ膣用ジェルの開発に大きな進展、米科学誌