【2月15日 AFP】古代エジプトの女性のミイラの足に付けられていた人工親指は、これまでに見つかったなかでは最古の実用的な人工器官だとする英マンチェスター大(University of Manchester)の研究チームの論文が、14日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に発表された。

 2000年にルクソール(Luxor)の近くで発掘された高位の僧侶の娘、Tabaketenmutのミイラの右足には、木と皮で作られた保存状態の極めて良い人工親指がくくり付けられていた。本来の親指は糖尿病のよる壊疽(えそ)で失ったと考えられる。

 この女性は紀元前950~710年の間に生存していたと考えられ、この義指は最古の人工四肢と結論づけられた。これまで最古とされてきたのは、これより数世紀あとの、イタリア・カプア(Capua)付近で発掘された古代ローマ時代の木と銅で作られた義足だった。

 この義指が単に来世のための「お飾り」ではなく、人工四肢としての役割を担っていたことは、歩行障害を持つ被験者2人を使った実験で確認された。

 研究者は、足の親指を2通り作成した。1つ目は、今回発見された人工親指を再現して木で作ったもの。2つ目は、紙と石膏と動物性にかわで作ったものだ。

 被験者に古代エジプトのサンダルを再現した靴を履いて歩いてもらい、圧力計とビデオカメラで観察した。親指には体重の約40%の加重がかかり、前方向への推進力を担っていたが、2人とも、木で作った人工親指の方がはるかに快適だった、と回答した。

 今回発見された人工親指は、親指と付け根をかたどった2枚の木板を皮ひもで結び合わせたもので、足の構造を十分に意識していたことがわかる。

 研究者は、「器具を開発した人物は、付け心地などを患者に確かめながら作っていたのではないか」と話している。(c)AFP