【1月21日 AFP】「ミセスT(Mrs T)」は非業の死を遂げたが、翼竜のメスに関する多くの手掛かりを教えてくれた――。中国遼寧(Liaoning)省の約1億6000万年前(ジュラ紀)の地層から、産卵直前に死んだとみられる翼竜と卵の化石を発掘したと、英国と中国の研究者らが20日の米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 発見された翼竜「ダーウィノプテルス」のメスの骨格化石は、ほぼ完全な状態で残っており、「ミセスT」と命名された。大きさはタカほどで、骨盤が大きく、過去に発見されたダーウィノプテルスの化石にはあった「とさか」がなかった。

 英レスター大(University of Leicester)のデービッド・アンウィン(David Unwin)氏は、「とさか」があり骨盤が小さめの個体がオスで、オスは「とさか」を使ってライバルのオスを脅したりメスを誘い寄せたりしていたのではないかと話している。ただし、このメスはまだ成体になりきっていなかったため「とさか」が発達していなかった可能性を指摘する声も学会にはある。

■爬虫類の卵にそっくり
 
 恐竜のメスと卵の化石が一緒に発見されるのは極めて珍しく、翼竜では初めてのことという。翼付近の骨が折れていたことから、ミセスTはおそらく火山噴火か嵐で翼を骨折し、湖沼に転落して溺死したとみられている。死骸(しがい)は底に沈み、孵(ふ)化数日前だったと見られる卵は体内から押し出されたのではないかという。

 卵は小さく、殻は柔らかかったと考えられ、爬虫(はちゅう)類の卵に似ていた。アンウィン氏は「卵が小さいと、それに要するエネルギーなどは少なくてすむ。翼竜などの活動的な生き物にとっては進化上の大きな利点だ」と話している。(c)AFP/Kerry Sheridan