【12月9日 AFP】幹細胞技術を用いて、2匹の父親マウスから子どもを誕生させることに成功したとする論文が、8日発行の米医学誌「Biology of Reproduction」に発表された。絶滅危惧(きぐ)種の存続、そして同性カップルが「遺伝学上のわが子」を持つことを可能にしてくれるかもしれない技術だという。

 米M.D.アンダーソンがんセンター(M.D. Anderson Cancer Center)の研究チームは、オス(XY)マウスの胎児の細胞を操作して、人工多能性幹細胞(iPS細胞)株を作製した。具体的には、成熟細胞の遺伝子を再プログラミングして胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に似た状態にした。

 このiPS細胞株から成長する細胞の一部は、その過程でY染色体を失い、XO細胞となった。このXO細胞をメスのマウスから採取した胚に注入したものを「代理母」マウスに移植したところ、父親由来のX染色体1本を持った子どもが生まれた。

 成長したマウスを通常のオスのマウスと交配させたところ、生まれた子はオスもメスも、2匹の父親の遺伝的関与を示していた。

 論文は、この技術を応用すれば、1匹のメスから精子を作ったり、2匹の母親から生存可能なオスとメスの子どもを作ったりすることが可能になるかもしれないと述べている。ただし、人間への応用は長い道のりになりそうだという。(c)AFP