【11月19日 AFP】欧州合同原子核研究所(European Organisation for Nuclear ResearchCERN)の研究チームが、反物質の一種である「反水素原子」を閉じ込めることに世界で初めて成功したと、17日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。38個を10分の1秒間ほど閉じ込めることができたという。素粒子物理学における最大の謎の解明に向けた大きな1歩となる。 

 英国の物理学者ポール・ディラック(Paul Dirac)が1931年に唱えた理論によると、エネルギーが物質に転換する際にはプラスの電気を帯びた粒子と、マイナスの電気を帯びた「反粒子」の1対が生み出される。この2つは、衝突すると微量のエネルギーを発散して消滅してしまう。

 宇宙の誕生時に物質と反物質が同数あった場合、2つは互いを消滅し合うため、宇宙は存在できなかったことになる。現実には、観測可能な範囲の宇宙においては物質の方がはるかに多く、反物資は極めて少ない。

 この数の不均衡の謎を解明する上では、技術的な困難が立ちはだかっていた。

 これまでの実験では、反水素原子の作成は開放環境下でのみ成功していた。ただし開放環境下では空気中の物質と衝突して即座に消滅してしまうため、測定や構造の分析が不可能だった。

 このほど研究チームは、強力な磁場をもつ装置を開発し、作成した反水素原子の閉じ込めに成功した。(c)AFP