【8月19日 AFP】有人火星探査は科学にとっては偉大な一歩かもしれないが、宇宙飛行士にとっては筋肉寿命を大幅に縮める危険な苦行になるかもしれないとする研究が、米生理学誌「Journal of Physiology」(電子版)に発表された。

 米マルケット大(Marquette University)のロバート・フィッツ(Robert Fitts)教授(生物学)率いる研究チームは、国際宇宙ステーション(International Space StationISS)に約6か月間滞在した米国とロシアの飛行士9人について、帰還当日にふくらはぎの筋肉の生体組織を採取した。

 打ち上げ45日前に採取しておいた生体組織と比較してみると、無重力下で筋肉が大幅に萎縮していく様子が明らかになった。筋繊維の重量、強度、弾力性の減少度を総合すると、体力は40%以上も低下。飛行士の実年齢は30~50歳だが、帰還時の筋肉年齢は80歳程度まで老化していた。

■NASA計画だと筋肉50%萎縮の恐れ

 米航空宇宙局(NASA)の有人火星探査計画では、火星への往復にかかる期間を3年(うち火星滞在期間1年)と想定しているが、その場合、運動に欠かせないふくらはぎなどの筋肉が最大で50%ほど萎縮する可能性があると教授は指摘する。

 なお、打ち上げ前に筋トレに励んでいても筋肉の減少には影響せず、それどころか、筋肉が発達した飛行士ほど萎縮率も大きいという皮肉な結果も明らかになった。

 宇宙空間では、重い宇宙服を身につけていることもあり、日常的な作業にさえ急速に疲労がたまっていくと思われる。もともと危険だらけの火星旅行にもう1つ危険が伴うことになる。(c)AFP

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