【8月5日 AFP】ヒトが6万7000年前にフィリピンに定住したことを証明できる可能性のある足の骨の一部を、フィリピン大学(University of the Philippines)とフィリピン国立博物館(National Museum)の考古学チームが発見した。これまで考えられていたよりも、数万年さかのぼるものだという。同博物館が3日、発表した。

 フィリピン国立博物館考古学部門の研究者タジ・ビタレス(Taj Vitales)氏によると、広大な洞くつ群で発見されたこの骨は、4万7000年前に初めてフィリピンに定住したと考えられていたヒト「タボンマン(Tabon Man)」より前のもので、「フィリピンで発見された中で、最古のヒトの骨」の可能性があるという。

 発掘されたのは、足の第3中足骨。2007年に、首都マニラ(Manila)の北約335キロにあるペニャブランカ(Penablanca)に近いカヤオ(Callao)の洞くつ群で見つかった。

■狩猟生活や道具の使用も

 現在、「カヤオマン(Callao Man)」と呼ばれるこの骨についての報告は、フランスで骨の年代を検査した後、ジャーナル・オブ・ヒューマン・エボリューション(Journal of Human Evolution)誌最新号に発表された。

 発掘調査を率いたアルマンド・ミハレス(Armand Mijares)教授によると、このカヤオマンは、体が小さく、男か女かを判別するのは難しいという。

 カヤオマンの骨の周辺で、シカやイノシシの骨を切断した跡が見つかったことから、カヤオマンは狩猟を行い、道具を作る技術を持っていた可能性が示唆されるという。

 ミハレス教授は、以前発掘された証拠から、タボンマンがフィリピンやその周辺の島に初めて定住したヒトとされていたが、「カヤオマンの骨は約7万年前までさかのぼる」と話した。

■ホモ・サピエンスとするのは仮段階

 骨の特徴の一部が、ヒトと明らかに異なる特徴をもつホモ・ハビリス(Homo habilis)やホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)に似ていることから、この発見により、カヤオマンを現生人類であるホモ・サピエンス(Homo sapiens)とするのは、まだ仮の段階だという。

 現在見つかっている証拠から、ホモ・サピエンスは20万年前にアフリカ大陸に出現したと考えられている。

 ミハレス教授によると、発掘された骨は、フィリピンに初めて定住したヒトの直系の子孫と考えられているアエタス(Aetas)人のすべてではないが多くの特徴をもっているという。アエタス人は背が低く、髪は縮れており、皮膚が浅黒い。

 また、同教授は、「外洋を渡る必要があるが、いかだやボートを作る技術がなければできない」ため、カヤオマンは当時、いかだやボートを作る技術を持っていた可能性もあると話す。

 ビタレス教授もフィリピンが海に囲まれていることから、ヒトはいかだに乗ってフィリピンに到達したと考えられると述べたが、フィリピンに最初に定住したヒトが、アジア大陸から来たのか、東南アジアの島々から来たのか、それともそれ以外の場所から来たのかについては、研究者の間で意見の一致はみられていないと話した。(c)AFP/Cecil Morella