【6月9日 AFP】宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration AgencyJAXA)の小惑星探査機「はやぶさ(Hayabusa)」が13日、小惑星「イトカワ(ITOKAWA)」まで往復50億キロメートルにおよんだ旅を終えて地球に帰還する。

 開発費に127億円を投入した「はやぶさ」は2003年5月9日に打ち上げられ、地球から太陽までの距離の倍以上も彼方にある全長540メートルほどの小惑星「イトカワ」を目指した。

 以後、エンジン故障、姿勢制御装置の不具合や電池の故障など数々のトラブルに見舞われながらも05年9月に「イトカワ」とランデブーし、同年11月に着陸した。「イトカワ」の地表で岩石の破片を採取しカプセルに収めた。このカプセルは、「はやぶさ」の帰還とともにオーストラリアのウーメラ立入制限区域(Woomera Test Range)に投下される計画になっている。
   
 成功すれば、月以外の天体に着陸し物質のサンプルを持ち帰った例は世界で初めてとなり、「はやぶさ」帰還には大きな期待が寄せられている。

 だが、「はやぶさ」の本体は大気圏に再突入した際に燃え尽きてしまう見込みで、「はやぶさ」ファンの間からは不死鳥としての再生を願う声も聞かれる。

 「はやぶさ」に一般の人びとからも熱い視線が注がれる状況について、「はやぶさ」ミッションに参加する東京大学の吉川真(Makoto Yoshikawa)准教授は、「はやぶさ」が前代未聞の宇宙ミッションに挑戦しているからではないかと話した。

 「はやぶさ」は「イトカワ」に着陸した際、弾丸を発射して「イトカワ」地表の岩石を砕き、舞い上がった砂を採取する計画だった。だが、弾丸は発射されなかった。それでも関係者たちは、着陸時に舞い上がったちりがカプセル内に入ったことにいちるの望みを託している。地球に燃え尽きて落下した隕石(いんせき)とは異なり、宇宙空間の天体で直接サンプルが採取できていれば、太陽系の進化プロセスを解明する大きな鍵となるからだ。

 もし、カプセルに何も入っていなかったとしても、「はやぶさ」は十分に偉大なミッションを遂げたと、天文学者たちは考えている。「はやぶさ」は「イトカワ」の赤外線・X線写真を撮影し、地表物質の密度や構成の分析なども行っているからだ。

 JAXAのウェブサイトには、専門家のみならず子どもたちや女性からも、「たとえあなたが燃え尽きても、あなたは不死鳥のように私たちの心の中に永遠に生き続けるでしょう」、「どのような最期であっても、私たちは一生あなたを忘れません」などといった「はやぶさ」への激励メッセージが寄せられている。(c)AFP/Miwa Suzuki