【6月5日 AFP】赤外線カメラとマイクを用いて野生のコオロギを観察し、その「性生活」をつまびらかにした研究成果が、4日の英科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 英エクセター大(University of Exeter)の生物学者らは、動作反応式赤外線カメラ96台とマイクをスペイン北部アストゥリアス(Asturias)地方の野原に仕掛け、25万時間分のビデオを分析するとともに、DNA「指紋」を収集してオス・メス別に残した子孫の数を調べた。

 オス・メスとも、最大40回と頻繁に交尾を行った。常に特定の相手というわけではなく、オスはメスを求めて「狩猟旅行」に出かけ、メスはすきを見てそばにいる別のオスと交尾する、といった行動が確認された。

 子孫の数については、交尾をしたメスはそれぞれ数百個程度の卵を産んだが、成虫になるまで生き残る子孫の数は多くて数匹程度だった。しかしオスの場合、成虫になるまで生き残る子孫の数はほとんどがゼロと、メスをさらに下回った。

■鳴き声よりルックスが大事?

 異性を引きつける能力と繁殖能力が比例するとは、必ずしも言えないこともわかった。

 例えば、形質が勝っているオスは、けんかに弱いオスよりも交尾回数が少なかったが、残した子孫の平均数は同じだった。

 長く鳴くことができるオスほど交尾回数は多い一方で、体が小さいオスほど子孫を確実に残すために鳴かなければならないという事実もわかった。つまり、メスは強そうなオスを好んでいた。

 また、オスもメスも、交尾相手が多いほど、子孫の数も多かった。

 結果について、ある研究者は、「大きな体格と生命力の強いオスが成功する上では、鳴き声の善しあしはそれほど関係ないようだ。おそらくメスにとって、見た目が頼もしければ鳴き声なんて関係ないのだろう」と話している。

 研究に参加した生物学者は、「コオロギの連続メロドラマは、地球上の数々の生物種が生きている間に経験する困難を体現している。野生における自然選択がどのように行われているかについて、人類にいろいろと教えてくれる」と説明した。(c)AFP