【5月31日 AFP】米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル「アトランティス(Atlantis)」は前週、最後の飛行を終え、25年におよぶ任務を終了した。残り2機の現役シャトル、「ディスカバリー(Discovery)」と「エンデバー(Endeavour)」も、飛行計画が延期されなければ今年11月までに退役する予定となっている。米国では現在、この3機の展示をめぐって、博物館同士の誘致合戦がくり広げられている。

 米フロリダ(Florida)州にある「ケネディ宇宙センタービジターコンプレックス(Kennedy Space Center Visitor Complex)」のビル・ムーア(Bill Moore)氏は、「競走が激しいのは間違いない」と語る。同施設を含め計21の博物館が、3機のスペースシャトルの引き受けに名乗りを挙げている。

■ディスカバリーは「売約済み」

 NASAは、エンデバーが最終飛行を行う11月から約1年後を目処に、スペースシャトル3機を歴史的記録として保存する意向を明らかにしている。39回のミッションを行った最も旧型のディスカバリーについては、NASAはすでに国立航空宇宙博物館(National Air and Space Museum)に提供を申し出ているが、残り2機についてはまだ決まっていない。

 国立米空軍博物館(National Museum of the US Air Force)は、アトランティスの展示を希望している。18人の元宇宙飛行士が、チャールズ・ボールデン(Charles Bolden)NASA長官に対し、米空軍は「スペースシャトル計画の設計や開発、資金確保などの面で有益な役割を果たした」として、同博物館でのアトランティス展示を求める嘆願書を送った。18名の中には、アポロ16号(Apollo 16)に搭乗し月面着陸を果たしたチャールズ・デューク(Charles Duke)元飛行士や女性初の宇宙遊泳を行ったキャサリン・サリバン(Kathryn Sullivan)元飛行士なども含まれている。

 同館以外にも、ともにNASAの施設であるテキサス(Texas)州のジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)とフロリダ州のケネディ宇宙センター、ニューヨーク(New York)のイントレピッド海洋航空宇宙博物館(Intrepid Sea, Air & Space Museum)、シカゴ(Chicago)のアドラー・プラネタリウム(Adler Planetarium)、シアトル(Seattle)の航空博物館(Museum of Flight)などが名乗りを挙げている。

■多額の設置費用

 一方、スペースシャトルをもらい受けるには、移送関連費用だけでも2880万ドル(約26億3000万円)はかかる。シャトルを一部分解して行うアンモニアやモノメチルヒドラジン、四酸化二窒素などの有毒物質の洗浄費用に2000万ドル(約18億円)、ボーイング747(Boeing 747)による輸送費用が800~900万ドル(約7億3000万円~約8億2000万円)必要とされる。

 シカゴの科学産業博物館(Museum of Science and Industry)は、展示開始までにかかる初期費用は総額約8000万ドル(約73億円)になるとの見方を示し、資金的に無理だとして展示をあきらめる判断を下している。(c)AFP/Virginie Montet