【5月19日 AFP】火星への有人飛行を想定してロシアが行う500日以上のカプセル滞在実験に参加するボランティアの男性6人が18日、記者会見で「自分たちは先駆者」などと抱負を語った。

 モスクワ(Moscow)での会見でロシア人のボランティア、ミハイル・シネリニコフ(Mikhail Sinelnikov)さんは「わたしたちは先駆者。わくわくする出来事だが、責任もある。チームメート(ほかのボランティア)たちと、成功のためにはなんでもしようと言いあっている」と語った。

 6月3日から開始される実験に参加するボランティアはロシア人3人、欧州圏から2人、中国人1人の計6人。モスクワ郊外で宇宙船を模した広さ180平方メートルのカプセル内に隔離され、1年半を過ごす。

 コロンビア系イタリア人のボランティア、ディエゴ・ウルビナ(Diego Urbina)さんは今回のミッションについて「実際によく火星を訪れることになろう未来の世代」のための土台を整えるものだと述べた。

■密閉空間に長期間隔離、心身への影響を調査

 実際の火星探査に見込まれるのとほぼ同じ日数の往路250日、復路240日、探査期間30日の計520日を想定し、宇宙船内とほとんど同じ環境で行われる滞在仮想実験は今回が世界初。有人火星飛行計画へ向けて最も解明されていない隔離環境下での心身への負担について試験する。

 可能な限り本当の宇宙飛行に近づける努力が、細部の設定にまで施されている。フランス人の参加者、ロマン・シャルル(Romain Charles)さん(31)は、カプセル内にきっちりたたんで積み上げられた宇宙服の数の多さに圧倒されたという。「洗濯はしないんだ。服が汚れたら外へ出す・・・つまり宇宙空間に捨てるというわけだ」と笑う。実験期間中シャワーを浴びられるのは10日に1回だ。

 この実験プロジェクト「MARS-500」と外部との連絡も実際の状況を模して、わざと遅れや中断を生じさせる。ボランティアと友人や家族との会話はさせないようにし、危機的状況でも自力で乗り切らせる。気分の落ち込みを防ぎ、決められた日課を守るために頼れるのは宇宙飛行士に見立てられたお互いだけという設定だ。

 中国人ボランティアのワン・ユエ(Wang Yue)さんは、密閉空間に閉じ込められることで生まれる心身のストレスを解消する方法として、ほかの仲間に太極拳を教えているという。

「MARS-500」に先立ち前年、ロシア科学アカデミー生物医学研究所(Institute for Biomedical Problems Russian Academy of ScienceIBMP)では、6人のボランティアによる105日間の閉鎖空間滞在実験が行われている。
 
 IBMPと共同で実験を行う欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)は「MARS-500」について「実際に火星まで行かずして、可能な限り正確に火星との往復飛行の全ミッションを模した」実験だと表現している。(c)AFP/Alissa de Carbonnel