【4月18日 AFP】生物兵器への応用が危惧(きぐ)される自然毒「リシン」から人体を守ってくれる可能性のある化合物を2つ発見したとする論文が、16日の米科学誌「セル(Cell)」に掲載された。

 フランス原子力庁(Atomic Energy CommissionCEA)の研究チームは、実験室で1万6500種の化学物質を調べ、リシンおよび腸管出血性大腸菌の産出するベロ毒素(志賀様毒素)から細胞を保護する2つの化合物を発見。「Retro-1」「Retro-2」と名づけた。

  これらは、毒そのものに作用するのではなく、毒の細胞への侵入経路に作用していた。これらの化合物をマウスに与えたあとでリシンを投与するとマウスは死ななかったが、リシンの投与後に化合物を与える順序だと効果が無かった。

 リシンは、ブレーキ液、石けん、ニス、インクなどの製造に使用されるトウゴマの種子から抽出される。世界で最も危険な毒素の1つで、わずか 1ミリグラムでも体内に入ると、成人でも3~5日で死亡することがある。旧ソ連の国家保安委員会(KGB)が暗殺に使用したこともある。今のところ、解毒剤は開発されていない。(c)AFP