【1月31日 AFP】人類は長年にわたり「地球外知的生命探査(Search for Extraterrestrial Intelligence、SETI)」、つまり「宇宙人探し」に熱意を傾けてきた。その一環として、宇宙人に向けて人類からメッセージを送るさまざまな試みがなされている。

 1972年と1973年に打ち上げられた宇宙探査機パイオニア(Pioneer)10号・11号には、人類からのメッセージを絵で記した金属板が取り付けられた。金属板には男女の人間の姿、そして地球と太陽の位置情報を示す記号が描かれている。

 1977年に太陽系外の探査計画で打ち上げられたボイジャー(Voyager)探査機1号・2号には、地球上の様々な音楽や地球の写真などが収録された金メッキの銅板製レコードが搭載された。

 だが、地球から最も遠くに到達した人工物体であるボイジャー1号が一番近い星に到着するまで、あと約4万年かかる計算だ。こうした方法で宇宙人を探索するのはあまりにも時間がかかりすぎる。

 人類のタイムカプセルを拾い上げてくれる宇宙人がはたして存在するのか、そして人類がそのころまで存続していて返事をうけとれるのかは、誰にも分からない。

■「能動的な地球外知的生命探査」への転換

 そこで注目されたのが電波を利用する方法だ。物体を送り届けるよりはるかに時間を短縮できる。過去50年間、地球外知的生命体が発する電波信号を検出するため宇宙にあふれるさまざま信号やノイズの観測が行われてきた。だがこれまでのところ、それらしい信号は発見されていない。

 このため、送られてくる電波を待つ「受け身」の探査から、こちらから電波を送る「能動的SETI(Active SETI)」への方向転換が図られた。強力な送信機を作り地球外知的生命体がいる可能性のある太陽系外の星に向けて電波を発信するというもので、送られるメッセージは地球や人類の情報を示す記号のような学術的なものや哲学的なものまでさまざまだ。

 中には次のような冗談めいたメッセージもある。「お金を送って下さい。どんな種類のお金でもかまいません。宇宙マネーでもOK。エイリアン通貨もOK。いん石や金、月の石、宇宙ゴミでも結構です」

 2008年には米航空宇宙局(NASA)がビートルズ(Beatles)の名曲の一つ 「アクロス・ザ・ユニバース(Across the Universe)」を北極星へ向けて発信した。 もしも北極星付近に地球外生物がいるのであればメッセージを送りたいと考えたためだ。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)は大喜びしたが、地球から約431光年離れた北極星にこの曲が届くのは2439年ごろだ。

■悪意を持った地球外知的生命体がメッセージを受けたら?

 一方、一部の専門家は、宇宙に向けてさまざまなメッセージ発信することは混乱を招く可能性があり、ただの「宇宙スパム」になるだけだと指摘している。

 欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の宇宙物理学者マルコム・フリドランド(Malcolm Fridlund)氏は、地球外知的生命体が存在する証拠が見つかっていない以上、能動的SETIは時間の無駄だと主張。さらに、「外」からの注意を人類に向けようとする行為は危険ですらあると警告を発している。「(宇宙に存在するかもしれない地球外知的生命体が)どんなものか見当もついていないのだから、もう少し注意を払う必要がある。まずは宇宙についてもっとよく理解すべきだ」

 英国の著名天体物理学者スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士も同意見だ。「人類より優れた技術を持つ敵意のある知的生命体に遭遇する可能性もある。慎重に行動すべきだ」

 英科学誌ネイチャー(Nature)は2006年、「能動的SETIのリスクは現実的なものだ。すべての地球外知的生命体が悪意を持っていないとは限らないし、相手が友好的だったとしても人類の側に深刻な影響を与えないとは言い切れない」という解説記事を掲載した。

 この記事をきっかけに、能動的SETIを擁護する研究者と、そうではない研究者の間で論争が巻き起こっている。(c)AFP/Richard Ingham