【10月27日 AFP】今からちょうど400年前にガリレオ(Galileo Galilei)が空をのぞいた望遠鏡は、今では子どものおもちゃ程度のものでしかない――しかしその望遠鏡は、われわれの知識の根幹を覆し、宇宙に関する概念を変えた。

 ガリレオが発明した筒眼鏡(望遠鏡)は、遠くの対象物を9倍に拡大して見せるものだったが、当初は天文学の用途としては受け取られなかった。この装置が初めてベネチアで公開されると、議員らの頭には軍事面での有用性が浮かび、喜んだ彼らはガリレオの給料を倍にするとともにベネチアの最高学府の終身教授に任命した。

 1609年10月、45歳のガリレオは自ら製作した屈折望遠鏡を空に向けたが、彼がこの高倍率の望遠鏡で「のぞいたもの」はのちに科学革命、つまり「パラダイムシフト(これまでの概念が覆され、新たな概念が主流となること)」をもたらすことになる。

 ガリレオは、木星の4つの衛星や月の表面にクレーターがあることなどを発見。かつてのコペルニクス(Nicolaus Copernicus)同様に「地動説」を唱えたため、ローマカトリック教会に異端と見なされて1633年に審問を受けた。地動説の撤回を求められたが拒否し、亡くなるまでの10年間は自宅軟禁に置かれていた。

 ローマ法王庁は2000年になって、ガリレオへの異端審問を公式に謝罪。バチカン博物館で今月開催された「2009:天文学と天体観測機器展」では、ガリレオに敬意を表し、ガリレオが使用した天体望遠鏡(複製)が展示された。

 だが、地動説への反論は、純粋に宗教的なものというわけではなかった。「天動説」は古代ギリシャに起源を持ち、科学的な定説として深く根付いたものだった。

 また、パリ天文台(Paris Observatory)のある専門家によると、見える対象を拡大することにより「五感を向上できる」という考え方も、当時はタブー視されていたという。

■新たなパラダイムシフト間近か?

「パラダイムシフト」は20世紀初頭にも起こった。スコットランドの数学者、ケルビン卿が、物理学にはもはや新発見は無いと宣言してからわずか数年後、当時特許庁の職員だったアインシュタイン(Albert Einstein)が特殊相対性理論に関する短い論文を発表した。

 このときも、パラダイムシフトは一夜にしては起きなかった。しかし、アインシュタインの理論はやがて、3世紀もの間続いてきた物理学の法則を覆すことになった。

 そして、新たなパラダイムシフトはすぐそこまで来ていると、一部の科学者らは指摘する。スイスでは現在、物質がどのように質量を獲得するのかを説明する亜原子粒子の検出を目指し、世界最大の粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron ColliderLHC)」で実験が進められている。

 宇宙の96%が暗黒物質(ダークマター)や「暗黒エネルギー」で構成されているとの理論もある。LHCで得られる結果によっては、科学の世界は新たな合意が形成されるまで、実り多い論争の時代に再び突入するかもしれない。

 ドイツの原子物理学者、マックス・プランク(Max Planck)氏は、古い理論というものは「なかなか死なない」ものだと説明する。「新しい科学的事実というものは、反対論者たちを説き伏せてと言うよりは、反対論者たちが死去して初めて、勝利を勝ち得るものだと言えよう」(c)AFP/Marlowe Hood