【10月15日 AFP】地球温暖化の影響で溶解したスイスのアルプス氷河から高濃度の有毒汚染物質が流出している――。このような研究結果をスイス金属実験研究所(Swiss Federal Laboratory for Materials Testing and Research)の研究チームが、米国化学会機関誌「Environmental Science and Technology(環境科学と技術)」に発表した。

 汚染物質は遠くから気流に乗ってアルプス氷河に運ばれる。

 研究チームは、1953年のダム建設によってできたアルプスのオーバーアール湖(Oberaarsee)の堆積物を分析したところ、現在では農工業での使用が禁止されているダイオキシンや殺虫剤DDTなどが検出された。

 これにより、1960~70年代にこれらの残留性有機汚染物質(POPs)が大量に生産され、この湖に蓄積されたことが分かったという。70年代以降、大部分のPOPsが使用禁止となったことから、堆積物におけるそれらの濃度は下がったが、ここ10~15年の堆積物でまた濃度が上がるという奇妙な現象が見られたという。

 チームは、オーバーアール湖の水の大部分は近くの氷河から流入しているが、地球温暖化の加速によって最近溶解した氷河には、POPsが使用されていた当時と同レベルの汚染物質が含まれていると指摘する。

 別の2つの湖でも同様の現象が見られた一方、氷河の水が注ぎ込んでいない湖では見られなかったという。

 春や夏には「短期間だが深刻」な汚染が引き起こされる可能性があり、アルプス地方の飲料水、魚を通じた食物連鎖、かんがい施設、人工スキー場などに影響をもたらす恐れがあるとチームは結論づけている。(c)AFP