ノーベル賞受賞者の顔ぶれでわかる、「米国への頭脳流出」
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【10月14日 AFP】(一部訂正)2009年のノーベル賞受賞者13人のうち、米国籍の研究者は11人。資金豊富な米国がまたもや、受賞者数で他国を圧倒した。全6賞のうち5賞を独占してもいる。だが、受賞者の国籍というのはあまり意味がないものかもしれない。
第二次大戦後に米国人が獲得したノーベル賞は、医学生理学賞が89人、物理学賞が74人、化学賞が58人。経済学賞、平和賞、文学賞もそれぞれ十数人と、獲得総数では1位だ。
なぜ、どのようにして、米国人はノーベル賞をたくさん獲得しているのだろうか。その答えは、「獲得していない」といえるかもしれない。
受賞者の経歴を見ると、世界をまたにかけて実績を積み上げていった様子がわかる。それは、さながら地球各所に複雑に入り組んだパッチワークのようだ。
例えば、物理学賞を受賞した米国籍のチャールズ・カオ(Charles Kao)氏。上海生まれで、ロンドンで教育を受け、現在は香港在住だ。共同受賞したウィラード・ボイル(Willard Boyle)氏は、カナダで生まれ、カナダ・マギル大(McGill University)で学んだ米国籍保有者だ。
化学賞を受賞した米国籍のベンカトラマン・ラマクリシュナン(Venkatraman Ramakrishnan)氏は、インド生まれで、現在は英国の研究所で働いている。さらに、医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン(Elizabeth Blackburn)氏は、オーストラリア生まれで、豪メルボルン大(Melbourne University)、英ケンブリッジ大(Cambridge University)で学んだあと、米国にわたり米エール大(Yale University)で博士号を取得した「米国人」だ。
これらの例と比較すれば、平和賞のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、さまざまな論争はさておき、「まぎれもない米国人」とされているうちの1人だ。
■なぜ米国なのか
英ウォリック大(University of Warwick)の今年1月の報告書によると、科学者が他国へ移住するのは今や一般的なことで、その恩恵を最もこうむっているのが米国だという。世界の著名な物理学者158人を調査したところ、約半数が、研究開発への支出が盛んな国へ移住していた。それは多くの場合、米国だった。
「世界の物理学者に米国人が占める割合は、もともとは(=米国生まれは)29.7%だったのが、大学卒業時には43.4%、博士号取得時には55.1%へと増えていき、今や67.1%になっている」と報告書は指摘している。
米国では、研究所と大学の合体が進んで高レベルの研究が行われていることもあり、世界トップクラスの研究者をひきつけているという事情もある。
国務省によると、米国は、優れた科学者や研究員の招聘(しょうへい)のために毎年3万5000件以上のビザを発行している。
だが、米ペンシルベニア州立大(Pennsylvania State University)のロジャー・ガイガー(Roger Geiger)教授は、「ノーベル賞米国独占状態」の本当のカギは、第二次大戦後、米教育機関に大量に流れ込んでいる「お金」だという。
実際、ハーバード大(Harvard University)に集まる寄付金だけで、コスタリカの国内総生産に匹敵する270億ドルにもなる。
一方、「数学のノーベル賞」といわれるフィールズ賞(Fields Medal)や、「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞(Pritzker Prize)は、いずれも膨大な研究費が必要とされない分野だが、これらの受賞者は長年ヨーロッパ人が独占している。(c)AFP/Andrew Beatty
第二次大戦後に米国人が獲得したノーベル賞は、医学生理学賞が89人、物理学賞が74人、化学賞が58人。経済学賞、平和賞、文学賞もそれぞれ十数人と、獲得総数では1位だ。
なぜ、どのようにして、米国人はノーベル賞をたくさん獲得しているのだろうか。その答えは、「獲得していない」といえるかもしれない。
受賞者の経歴を見ると、世界をまたにかけて実績を積み上げていった様子がわかる。それは、さながら地球各所に複雑に入り組んだパッチワークのようだ。
例えば、物理学賞を受賞した米国籍のチャールズ・カオ(Charles Kao)氏。上海生まれで、ロンドンで教育を受け、現在は香港在住だ。共同受賞したウィラード・ボイル(Willard Boyle)氏は、カナダで生まれ、カナダ・マギル大(McGill University)で学んだ米国籍保有者だ。
化学賞を受賞した米国籍のベンカトラマン・ラマクリシュナン(Venkatraman Ramakrishnan)氏は、インド生まれで、現在は英国の研究所で働いている。さらに、医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン(Elizabeth Blackburn)氏は、オーストラリア生まれで、豪メルボルン大(Melbourne University)、英ケンブリッジ大(Cambridge University)で学んだあと、米国にわたり米エール大(Yale University)で博士号を取得した「米国人」だ。
これらの例と比較すれば、平和賞のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、さまざまな論争はさておき、「まぎれもない米国人」とされているうちの1人だ。
■なぜ米国なのか
英ウォリック大(University of Warwick)の今年1月の報告書によると、科学者が他国へ移住するのは今や一般的なことで、その恩恵を最もこうむっているのが米国だという。世界の著名な物理学者158人を調査したところ、約半数が、研究開発への支出が盛んな国へ移住していた。それは多くの場合、米国だった。
「世界の物理学者に米国人が占める割合は、もともとは(=米国生まれは)29.7%だったのが、大学卒業時には43.4%、博士号取得時には55.1%へと増えていき、今や67.1%になっている」と報告書は指摘している。
米国では、研究所と大学の合体が進んで高レベルの研究が行われていることもあり、世界トップクラスの研究者をひきつけているという事情もある。
国務省によると、米国は、優れた科学者や研究員の招聘(しょうへい)のために毎年3万5000件以上のビザを発行している。
だが、米ペンシルベニア州立大(Pennsylvania State University)のロジャー・ガイガー(Roger Geiger)教授は、「ノーベル賞米国独占状態」の本当のカギは、第二次大戦後、米教育機関に大量に流れ込んでいる「お金」だという。
実際、ハーバード大(Harvard University)に集まる寄付金だけで、コスタリカの国内総生産に匹敵する270億ドルにもなる。
一方、「数学のノーベル賞」といわれるフィールズ賞(Fields Medal)や、「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞(Pritzker Prize)は、いずれも膨大な研究費が必要とされない分野だが、これらの受賞者は長年ヨーロッパ人が独占している。(c)AFP/Andrew Beatty