【9月25日 AFP】火星の北極と赤道の中間あたりの緯度にある新しいクレーターの中に、氷を発見――。米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「マーズ・リコネサンス・オービター(Mars Reconnaissance OrbiterMRO)」の高解像度カメラ「HiRISE」の画像を分析していた米アリゾナ大学(University of Arizona)などの研究チームが、25日の米科学誌サイエンス(Science)にこのような論文を発表した。

 論文は、「火星の高緯度の地下に氷があることは知られていたが、火星の気候を考慮した場合の一般概念には反して、氷が赤道により近い所にもあることが新たにわかった」としている。

 また、いん石の衝突によってできたこの新しいクレーターで発見された水氷は純度が極めて高いという。同大のシェーン・バーン(Shane Byrne)氏は「火星の水氷の成分はこれまで、ちりと氷が50%ずつと考えられてきたが、今回発見された水氷はちりが1%、氷が99%だった」と話している。

 研究チームは、MROに搭載された複数のカメラによる連続撮影の画像により、新しい年代の5つのクレーター(深さ約45センチ~2.5メートル)の底に純度の高い青く輝く物体を確認した。

 この物体の観測を始めたところ、水氷のように次第に消えていくのが観察された。火星上の水氷は不安定で、直接水蒸気となって大気中に消えることがわかっている。

 そして、この水氷は非常に短期間のうちに蒸発した。初めに観測されてから200日後には消滅していたのだ。

 バーン氏は、この氷はさほど大昔ではない数千年前、現在よりも気候が湿潤だった頃の名残ではないかと見ている。(c)AFP