【9月18日 AFP】白亜紀末期に北半球で繁栄した巨大肉食恐竜、ティラノサウルス・レックス(Tレックス、Tyrannosaurus rex)の祖先である、新種の小型恐竜の化石が中国で発掘された。米シカゴ大(University of Chicago)などが17日の米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した。

 見つかった化石は、全長約3メートルで、推定体重は約60キロ。約1億2500万年前、成体になる前の5~6歳の個体とみられる。大きさはTレックスの約100分の1だが、大きな頭、発達した筋肉、小さくて短い前足などTレックスの体形の特徴をすべて備えている。これらの特徴は大型化する肉食恐竜が環境に適応するうえで獲得したものだと考えられていた。

 今回の発見は、Tレックスの進化の過程に関する議論に全く新たな光をあてるものとなった。ティラノサウルス属は8500万年前に巨大化を完了し、約6500万年前に絶滅した。アメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)のスティーブン・ブルサット(Stephen Brusatte)氏は、「ティラノサウルス属は、地球上にいた時間の約80%、つまり進化の過程の大半を小型動物として存在していた。ほかの大型肉食恐竜の影におびえながら暮らしていた」と説明する。ほかの肉食恐竜が絶滅したため、ティラノサウルスは大型化できたのだろうという。

 発見された化石は、ティラノサウルス属の小さな前足は、体重増大の影響を減殺するために小型化したのではなく、敏捷性やスピードを獲得するための進化だったことを物語っているという。

 化石は保存状態が良く、骨はほぼすべてそろっている。まだ土に埋まった状態の写真を見て科学的に大きな価値があることに気づいた恐竜好きの米国人眼科医ヘンリー・クリーグスタイン(Henry Kriegstein)氏が購入し、シカゴ大に分析を依頼したという。クリーグスタイン氏は研究が終われば化石を中国に返還する意向で、クリーグスタイン氏への敬意を込めてこの恐竜には「Raptorex kriegsteini」という学名が付けられた。(c)AFP/Mira Oberman