【9月17日 AFP】「地獄」に例えられることが多い金星だが、かつては地球と同じように水が豊富にあった可能性があるとする研究結果が、ドイツ・ポツダム(Potsdam)で開催中の欧州惑星科学会議(European Planetary Science Congress)で16日、発表された。

 金星は、大きさも年齢も地球と似通っていることから、かつては「地球と金星は双子だった」との空想が盛んだったが、1960年代に行われた一連の探査により、あっけなく打ち砕かれてしまった。表面は鉛をも溶かすほどの高温で、水の存在を示すものは何も見いだされなかったためだ。金星の大気中には、二酸化炭素と硫酸の痕跡があるばかりだった。

  フランスのLATMOS研究所のエマニュエル・マルク(Emmanuel Marcq)研究員らは、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の金星探査機「ビーナスエクスプレス(Venus Express)」が収集したデータから、こうした「痕跡」はかつて表面に存在していたかもしれない大量の水の名残だとする論文を発表した。

 彼らは、雲よりもはるかに上空にある高度10キロから110キロの大気中に存在する水蒸気について、比重に着目した。重水素を含む「重水」の通常水に対する比率は、高度が高い所では低い所に比べて2倍近く高くなることがわかった。

 こうしたデータは、重水は通常水のようには金星の引力から容易に逃れられなかったことを示しているという。マルク氏は、金星にはかつて大量の水があったが、宇宙空間に流出したか、または太陽風の影響で蒸発したと考えている。

 マルク氏は、「重水が多く含まれているのは、上層大気で水が消失しつつあるという強力な証拠。金星は大昔には今よりも湿潤で、地球に似た惑星だった可能性がある」と結論付けている。(c)AFP