【9月14日 AFP】窒素原子と酸素原子がそれぞれ1つずつ結合した一酸化窒素(NO)は、病原菌が抗生物質に耐える上で重要な役割を果たしているという研究結果が、米科学誌「サイエンス(Science)」で発表された。

 研究を主導したニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター(New York University Langone Medical Center)のEvgeny Nudler教授(生化学)によると、一酸化窒素は、多くの抗生物質について、その効果を弱める作用があるという。

 有毒な大気汚染物質として知られていた一酸化窒素だが、1987年にほ乳類で生理学的に大きな役割を果たしていることを示す研究が発表されてからは、学習と記憶、血圧の制御、陰茎勃起、消化、感染症やがんの防御作用など、さまざまな生命活動に関与していることが明らかになっている。1987年の研究を発表した学者らは後にノーベル賞を受賞した。

 今回の研究を発表した研究チームは数年前、酸化ストレスから身を守るため病原菌が一酸化窒素を結集させることを明らかにしていた。今回の研究では、多くの抗生物質は病原菌に酸化ストレスを引き起こして死滅させる一方、一酸化窒素はこの効果を弱めるという理論を支持する知見が得られた。

 研究チームは、バクテリアやヒトの体内には一酸化窒素の合成に関与する酵素があるが、このような酵素を阻害する薬剤を使えば、薬剤耐性菌に対する既存の抗菌剤の効果を高められる可能性があるとしている。このような酵素阻害薬はすでに販売されている。(c)AFP