【9月9日 AFP】攻撃されたヤモリはしっぽを切って逃げるが、このしっぽには何が起こっているのだろうか?しっぽは最大で30分間、跳ねるだけではなく極めて複雑な動きを持続できるという研究結果が9日、英国王立協会(Royal Society)の専門誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」に発表された。

 カナダ・カルガリー大学(University of Calgary)のアンソニー・ラッセル(Anthony Russell)教授と米サウスカロライナ(South Carolina)州のクレムゾン大学(Clemson University)のティモシー・ヒッガム(Timothy Higham)氏の2人は、切れたしっぽの動きを精密に分析するため、ヤモリの一種、ヒョウモントカゲモドキ4匹を対象に、筋電図検査(EMG)と高速ビデオカメラを用いて、切断された瞬間からしっぽを観察した。

 その結果、大半の動物では、脳の積極的な制御がなければ反射的な単純な動きしかしないのに対し、切れたヤモリのしっぽの動きには極めて複雑かつ多岐にわたるレパートリーがあることがわかった。3センチの高さまで跳び上がるというアクロバチックな動きも見られたという。 

 進化の観点では、リズミカルな動きに突然のジャンプやとんぼ返りを加えると、予測不可能性が増して敵の注意を一層そらすことができるという利点があると論文は指摘している。

 また、自然選択の過程で、「しっぽも逃げられるよう」にしっぽの動きがより複雑に、より持続されるようになった可能性もあるという。ヤモリは、しっぽを切った場所にわざわざ戻って、しっぽを食べることが知られている。しっぽに貯えられていた貴重な脂肪分を取り戻すためだと考えられている。

 今回の発見は生物学的に興味深いだけでなく、医学的にも脊髄(せきずい)の機能と脊髄損傷の影響を調べる上で、新たな手掛かりになるかもしれないという。(c)AFP/Marlowe Hood