【8月4日 AFP】夏日となった3日、都内の混み合った歩道や地下鉄駅を、3体のサイボーグ、いや人間が、汗もかかずに歩いている。黒い服を着た3人の下半身にはがい骨のような白いプラスチックが装着されている。

 これは、人間の動作をアシストし、負傷者や身体障害者が「楽に移動できる」ことを目指したロボットスーツ「HAL(ハル)」。男性2人、女性1人の3人は、スーツの「着心地」を確かめるため、茨城県つくば市から、50キロ離れた秋葉原まで、列車とタクシーを乗り継いで徒歩で向かっているのだ。歩行は時速1.8キロ。

 通行人らの好奇な視線の中、3人はロボティクス会議が開催されるビルに到着した。実験に参加したサイバーダイン(Cyberdyne)の社員は、「2時間の道のりは(ロボットスーツのおかげで)非常に楽だった。ちっとも疲れていません」とにこやかに語った。4階の会場までは、エレベーターではなく階段を昇ることにした。  

 会場に入った3人は、トヨタ自動車(Toyota Motor)の電動2輪車「ウィングレット(Winglet)」、富士重工業(Fuji Heavy Industries)が開発した清掃ロボットなどの出迎えを受けた。

 ハルは筑波大学(Tsukuba University)大学院の山海嘉之(Yoshiyuki Sankai)教授が開発したもので、体表を流れる微量の電流をとらえて筋肉の動きを予測し、装着者が意図した方向に自動的に動く。重量は11キロ。教授が設立したサイバーダインは、病院や老人養護施設への貸し出しを既に始めており、最近ではデンマークからの注文を受けたという。

 独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の岡野克弥(Katsuya Okano)氏は、介護分野でのロボット産業の成長率を100倍以上と予測しており、安全基準を整備していくと話す。なお、政府は世界の介護ロボット市場について、2025年までに6.2兆円規模に拡大すると予想している。(c)AFP/Kyoko Hasegawa