【7月17日 AFP】地球で天然資源が徐々に枯渇していくなか、一部の科学者は月に熱い視線を向けている。将来の世代にとって、月は天然資源の宝庫となる可能性を秘めているのだ。

 米国人宇宙飛行士のニール・アームストロング(Neil Armstrong)船長が、1969年に人類で初めて月面に到達してから40年。一方、米国は2020年を目標に有人月探査の再開を予定。米国以外にも、中国やロシアなどが有人月飛行を計画している。月は今なお人びとを魅了し、好奇心をかきたてる存在なのだ。

 米国は月面での基地建設を目指しているが、その目的の1つが、地下に眠っているとみられる天然資源の詳細調査だ。

 1972年にアポロ17号(Apollo 17)で月面に着陸した経験を持つ元宇宙飛行士の地質学者、ハリソン・シュミット(Harrison Schmitt)氏は、「月には、膨大な科学情報が未発見のまま眠っている。これらの情報は、地球など太陽系惑星の初期の歴史を解く鍵をもたらすだろう」と話す。

 これまで、12人の米国人宇宙飛行士が月面着陸を果たし、シュミット氏は、月面を踏んだ最後の米国人となった。6回のアポロミッションでは、月から計382キロの岩石と土壌が地球に持ち帰られた。このなかには、太陽系の形成が始まった約45億年前ごろの岩もあり、科学者らは「ジェネシス・ロック(創世記の岩)」と呼んでいる。

■最も有望な天然資源は「ヘリウム3」

 月には事実上、大気が存在しない。このため、地表が水や空気と接触することはなく、地球でみられる地質変化が起きたことはない。地質学的には白紙の状態だといえる。

 一方、シュミット氏によれば、月の土壌にはヘリウム3が豊富に蓄積されているという。これは太陽の外層で発生したヘリウム3が、太陽風に乗って飛んできたものだ。地球に到達したヘリウム3は、磁極の影響で吹き飛ばされてしまい残らない。

 ヘリウム3は、核融合発電の燃料として極めて有用な気体だ。核融合発電の技術はまだ初期段階にあるが、「地球では、非常に重宝される気体となる」とシュミット氏は言う。

 月には、100万トン前後のヘリウム3が埋蔵されていると推定される。25トンのヘリウム3で、欧州連合(EU)と米国を合わせた1年分の消費電力をまかなえるとされる。

 このほかにも、火星探査など長期の宇宙ミッションに参加する宇宙飛行士の訓練や宇宙空間に慣れる場としても、月は理想的な場所だと米航空宇宙局(NASA)はみている。

 現在の技術では、38万4400キロ離れた月に到達するまで、シャトルで4日間かかる。(c)AFP/Jean-Louis Santini