【7月16日 AFP】火星と木星の間の小惑星帯にただよっている原始の岩塊の多くは、もとは彗星(すいせい)であり、現在外側にある惑星の巨大化のあおりを受けて、軌道からはじき飛ばされたものだった――15日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」にこうした論文が発表された。

 小惑星帯の正体については、「原始惑星系円盤」と呼ばれる新星を取り巻く濃密なガスの輪から取り残された残がいだというのが定説になっているが、軌道を回るこれらの岩塊は長らく科学者らの好奇心を刺激してきた。個々の岩塊は成分の違いが大きく、氷と岩の混合物だったり、火成岩だったりと、その起源が一筋縄ではないことを物語っている。

 その謎を解いたとするのが、フランス国立科学研究センター(National Centre for Scientific ResearchCNRS)などのチームで、小惑星の多くはもともとは彗星だったという研究結果を発表した。

■数学モデルで分析

 研究チームは、ちりやガスの塊から惑星が形成されつつある初期の太陽系の数学モデルを作成し、その発展過程を分析した。

 このモデルによると、木星、土星、天王星、海王星といった巨大惑星たちは、その発生期には太陽から5-15天文単位(AU)という非常に狭い範囲で公転していた。AUは太陽系内の距離を表す天文単位で、太陽から地球までの距離、約1億5000万キロを1AUとする。

 その時期、これらの巨大惑星の外側、太陽から16-30AUの範囲には、太陽系外縁天体として知られる円盤状の彗星群があった。

 巨大惑星たちは、さらに大きくなるにつれて軌道が不安定になり、約6億年後には天王星と海王星が引力の関係ではじき飛ばされてしまった。その際、外側にあった円盤状の彗星群に衝突し、その中の彗星を太陽系中にばらまいた。これらの彗星の多くが、比較的引力が弱い小惑星帯にひきつけられ、現在もその場所にとどまっている――以上が、数学モデルから導き出されるという。 

■微小隕石の起源は彗星か?
 
 この数学モデルが正しいとすると、最も原始的な小惑星と彗星との違いは、これまで考えられてきた以上に小さい可能性がある。  

 また、議論が盛んになされている、微小隕石の起源の謎を解く手がかりにもなるかもしれない。微小隕石とは、地球の大気圏に突入しても燃え尽きなかった地球外から降り注ぐ粒子だ。微小隕石は組成も構造も通常の隕石とは異なるが、彗星に由来すると考えると、生来の小惑星よりも有機物質が豊富に含まれ、脆いことの説明がつく。(c)AFP