【7月13日 AFP】アポロ11号(Apollo 11)が人類初の月面着陸に成功してから40周年。これまでに12人の米国人宇宙飛行士が月面を踏んだ。
 
 月面着陸後の宇宙飛行士たちの人生はさまざまだった。アポロ計画によって、敬虔なキリスト教徒だったある飛行士は、信仰の根本を問われた一方、別の飛行士は生涯に一度の貴重な経験から、科学者としての知識を深めた。

 12人のうち現在も9人が健在だが、彼らが連絡を取り合うことはまれだという。

 今回、AFPがインタビューした2人の元宇宙飛行士、エドウィン・オルドリン(Edwin Aldrin)氏(79)とハリソン・シュミット(Harrison Schmitt)氏(74)は、対照的な人生を歩んだが、1点については意見が一致する。太陽系、さらにはそれを越える宇宙の探索を続ける義務と責任を、人類は負っているという点だ。

■宇宙空間に立ち、深く変わった宗教観 -オルドリン氏

 歴史的なアポロ11号の乗組員だったオルドリン氏は、1969年7月20日、ニール・アームストロング(Neil Armstrong)船長が月面に降り立った数分後、自らも月の地を踏んだ。オルドリン氏はこの時の月面を「荘厳な荒れ地」と評した。

 当時39歳だったオルドリン氏は、その後、月面に降り立った人類2番目の男として、英雄的な扱いを受けることになり、人生が大きく変わってしまったという。

 オルドリン氏はキリスト教長老派教会の敬けんな信者で、宇宙船内で聖餐式を行うほどだった。しかし、月へのミッションから3年以内に米航空宇宙局(NASA)を退職し、月面着陸に成功した英雄としての有名人扱いに悩み、アルコール依存症や抑うつ症状に苦しむことになる。

 しかし、問題を最終的に克服したオルドリン氏は、AFPとのインタビューで、月面を歩いたという経験によって自分の精神世界が「より壮大な普遍的なもの」に変化したと語った。

 その後、オルドリン氏は理論物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)の考えに共感するようになり、「宗教的で精神的な、人知を超えた次元の知能が創造した全宇宙のなかで、人類はわずかな一部にすぎない。宇宙の創造全体は、わたしたちのもつ神性の概念とはまったく違うものだろう」という考えに至った。

 今では、静かな生活を送るオルドリン氏だが、月面着陸40周年で再び自分に人びとの注目が集まるのではないかと危ぐしている。

 NASAを早々に退職した同氏だが、「月以外の惑星への着陸を果たすのは、人類の宿命だ」と述べ、宇宙旅行計画を熱心に支持している。

■宇宙計画における国際協力の制限を主張 -シュミット氏

 インタビューに応じたもう1人の元宇宙飛行士シュミット氏は、最後の月面着陸ミッションとなったアポロ17号(Apollo 17)の乗組員として1972年12月、月面に降り立った。

 当時37歳の地質学者としてアポロミッションに参加したシュミット氏は、オルドリン氏と異なり、月面着陸を果たした後も人生への変化は「正直、特になかった」という。

「アポロミッションの後で変わったことがあるとすれば、人びとが月はどうだったかと、わたしに尋ねるようになったことくらい。地球や太陽系、宇宙に対する認識は変わらなかった」(シュミット氏)

 シュミット氏はその後もNASAに勤務したのち、ニューメキシコ(New Mexico)州から出馬し、上院議員を務めた。

 宇宙開発における積極性と競争力の維持は、「民主国家の長期生存に絶対不可欠」というシュミット氏の主張は、宇宙開発における国際協力の制限だ。

 米国、欧州、日本、オーストラリア、カナダなどの民主主義国家が連携し、中国、ロシアなどの非民主主義国家に対抗する長期計画が必要だと語る。

 冷戦時にアポロ計画に参加したシュミット氏によれば、中国やロシアもアポロ計画の重要性を強く認識しており、欧米に対して、技術開発や教育などの分野で優位に立とうとするそうした国家が、宇宙空間の支配も目指すことは必至だという。

 最後にオルドリン、シュミット両氏とも、月面を経験した宇宙飛行士たちが旧交を温めることは、公式行事をのぞいては、あまりないと述べた。シュミット氏によれば、宇宙飛行士はマイペースなタイプが多く、大勢での集まりをあまり好まないのだという。(c)AFP/Jean-Louis Santini