【7月3日 AFP】サンショウウオは脚を切断されても再生するが、このメカニズムを解明したとする論文が、1日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。ヒトに応用して臓器などの再生に役立てられることが期待される。

 すべての生き物は体の一部を再生する能力を持っており、たとえばほ乳類は、皮膚を再生したり折れた骨を接合することができるが、サンショウウオの再生能力は群を抜いている。サンショウウオは脚を失っても数週間以内に新しい脚が生えてくるし、損傷した肺を再生させることも、切断された脊髄の修復も、脳の損傷個所の補充も可能だ。 

 その理由については、これまで、サンショウウオが多能性細胞によって切断面に「再生芽」を作ることができるためと考えられていたが、米フロリダ大(University of Florida)などの研究グループは、再生はより単純な組織特異性のある細胞で行われていると主張している。

■実験内容

 研究チームはまず、脊椎(せきつい)動物の研究において広く使用されているメキシコサンショウウオの遺伝子に、蛍光物質を含むクラゲの遺伝子を組み込んだ。この遺伝子を含んだ細胞は、紫外線を当てると緑色に光るために「マーカー」の役割を果たし、細胞の動きや発達をつぶさに観察することができる。

 次に、遺伝子を組み換えた組織を、メキシコサンショウウオの胚(はい)の、体の各部位が形成される出発点となる場所へ移植し、胚の成長に伴いこれらの細胞がどう変化するかを観察した。

 この遺伝子組み換えサンショウウオが成長したところで、脚または器官を切断した。

 遺伝子を組み換えた組織を、今度は正常なメキシコサンショウウオに移植し、体の一部を切断して、切断面の「再生芽」が作られるときにマーカーの緑色の細胞がどうなるかを観察した。

 すると、再生はこれまで考えられていたような多能性細胞でではなく、切断された元の組織を「記憶している」細胞で行われていることがわかった。言い換えれば、「古い筋肉細胞」が新しい筋肉細胞を、「古い神経細胞」が新しい神経細胞を、「古い皮膚細胞」が新しい皮膚細胞を作るということだ。

 多能性細胞については、皮膚と軟骨を生成するタイプのものしか見いだされなかった。場合によっては、これら2つのタイプの細胞は役割を交換することができるという。

 サンショウウオの再生能力が組織特異性細胞に由来しているとなると、ほ乳類の場合の再生過程にこれまで考えられていたよりも近いことになり、人間の体の組織の再生への実現が期待される。(c)AFP