【6月18日 AFP】「遺伝子コピー数多型(Copy Number VariationCNV)」と呼ばれる遺伝子異常と、がんとの間に初めて相関性が確認されたとの論文が、17日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 米フィラデルフィア小児病院(Children's Hospital of Philadelphia)のジョン・マリス(John Maris)医学博士率いる研究チームは、がんによる子どもの死亡総数の15%を占める神経芽細胞腫に着目。第1染色体のCNV(DNAコピー数の不足または過多)が、がんの進行において重要な役割を担っている可能性があることを発見した。

 DNAの伸張の抑制は、神経系の発達に関与する遺伝子群の中で起き、正常な細胞やがん細胞内でそうした遺伝子が作られる量に影響するという。

 マリス博士らは前年、これとは別に、独立して神経芽細胞腫の希少な遺伝型を生じさせる可能性がある「ALK」と呼ばれる遺伝子を特定。さらに前月には、子どもの耐性を低下させる一般的な変異形を「BARD1」と呼ばれる第3遺伝子の中に発見した。

■CNVはがん性腫瘍を誘発

 今回の研究は、謎の多い神経芽細胞腫の発生要因をめぐるジグソーパズルの1片を埋めただけではなく、がんを誘発する可能性のある遺伝物質という新たなカテゴリーに関わる点で重要だ。

 これまで、CNVはがん性腫瘍を誘発するとは考えられていたものの、その証拠は乏しかった。マリス博士は今回、高処理能力のコンピューターを使い、全ゲノム関連解析という研究方法で、がん患者と健康な人のDNA伸長を比較。その結果、CNVによって神経芽細胞腫が発生しやすくなるという仮説が証明されたという。

■遺伝性は?

 一方で、今回の研究結果は、がんなどの病気の遺伝性を明確に定義するものはないとの事実も示している。

 たとえば、たったひとつの遺伝子の変異で引き起こされる病気は、メンデル性疾患の筋ジストロフィーや嚢胞性線維症など数えるほどしかない。多くの病気が、遺伝や環境などの要因が複雑に絡み合って発症する。

 マリス博士は「神経芽細胞腫も、ほかのがん同様、親からの遺伝による発生と考えられる例は、全体の1-2%に過ぎず、その他の発生は一見、偶然に見える。しかし、今回の解析で、実は単なる偶然ではなく、そこには遺伝子のぜい弱性というものがあることが示された。ただし、そのぜい弱性はこうしたリスク要因を父方と母方の両方から受け継ぐという最悪の場合に起こる」と語った。(c)AFP/Marlowe Hood