【6月9日 AFP】中国と英国の科学者による研究チームが、数百万年前の南極の地形は山脈の間を河川が流れる現在のヨーロッパ・アルプス(Alps)山脈に酷似したものだったとする調査結果を、3日付けの英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。併せて、南極の氷床下数千メートルに隠された地形の写真も、同誌に掲載された。

 研究の成果は、これまで地球上で最も到達が困難とされてきた東南極(East Antarctic)高地の謎に挑んだ中国の氷河学者のたゆまない努力のたまものだといえる。

 研究チームは、レーダーを搭載した地下探知機を用いて、標高4093メートルの地点、平均気温マイナス58.4度のドームA(Dome A)と呼ばれる高地の地層を、1辺30キロメートルの立方形状ごとに掘削する調査を、2004年から05年、07年から08年の2回にわたって行った。

 その結果、レーダーに映し出されたのは、山岳や渓谷、河川の跡がある古代アルプス同様の地形だった。渓谷はその後、氷河によって、さらに深くえぐられたと考えられる。こうした山岳地形は、おそらく1400万年もの間、氷の下に埋もれたまま保存されていたとみられる。こうした調査結果は、地球で極冠が形成された経緯を示す深海の同位体記録にも一致するという。

 調査結果は、始新世(Eocene、約5200万年-3400万年前)に地球で冷却期があったことを示唆する。その後、大気中の自然発生した温室効果ガスの濃度が低下し、さらに急激な冷却期が2回訪れたとみられるが、この温室効果ガスは、現代では人間が作り出し、地球温暖化の原因となっているものと同種のガスだ。地球軌道の変化や南極の周囲を流れる低温海流も、南極に極寒気候をもたらす大きな要因となった。

 研究チームは、南極で氷河化が最初に始まった場所は、おそらく標高の高いガンバーツェフ(Gamburtsev)山脈ではないかとみている。当時、夏季の南極の気温は3度程度だったという。(c)AFP