【4月20日 AFP】光も酸素もない南極の氷河の下で、数百万年前の生態系が維持されている。――米モンタナ州立大学(Montana State University)などによる研究結果が、17日付けの米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

 研究チームは、南極大陸東部のテイラー氷河(Taylor Glacier)の下から流れ出している「血の滝」と呼ばれる、鉄分を多く含む赤褐色の水を調査した際にバクテリアを発見した。氷河下の冷たく塩分豊富な環境に生息するこうしたバクテリアは、体内の硫黄化合物やイオン化合物を使って生きていくことで環境に適応していた。

 また、テイラー氷河下の塩水たまりは、平均水温がマイナス10℃であるにもかかわらず、塩分濃度が海水より3-4倍高いために凍らないこともわかった。研究チームは、こうした生態系は、地球全体が氷河で覆われていた数百万年前の「全球凍結」時代の生態系を今に伝えるものだとしている。 

 研究チームは、光合成ができないこうした環境において生態系が維持されてきたメカニズムを解明しようと試みている。共同執筆者のジョン・プリスク(John Priscu)教授は、「(南極大陸下の)生態系は、厳しい環境下で長い間隔絶されてきた。こうした生態系の研究は、地球外生命の可能性を探る上でも役立てることができる」と話している。

 火星および、木星の衛星エウロパ(Europa)は、分厚い氷で覆われており、その下で生命が育まれているかもしれない。(c)AFP