【4月15日 AFP】米科学者団体「憂慮する科学者連盟(Union of Concerned ScientistsUCS)」は14日、食糧不足の緩和に役立つとされ、この10年以上の間に米国で作付面積を増やした遺伝子組み換えのトウモロコシと大豆は、実際には穀物の増産にほとんど寄与しなかったとする報告書を発表した。

 報告書では、「この高額な費用を必要とする遺伝子組み換え技術の成果に関する現実的な調査の結果、この技術が今後の世界の食糧供給において大きな役割を果たすことはほとんどないと考えられる」と結論づけている。

 この調査は、1990年代初め以降に査読を経て発表された学術論文を分析する方法で、過去13年間に米国内で商品化された遺伝子組み換えのトウモロコシと大豆について行われた。

 報告書によると、米国内で生産されるトウモロコシの63%、大豆の90%が遺伝子組み換え作物だという。その上で報告書は「全体としては、トウモロコシと大豆の生産高はこの15年で大幅に増加したが、その大部分が遺伝子組み換えではなく従来型の栽培技術やその他の農業技術の発達によるものだった」と指摘している。

 また、特定の除草剤への耐性がある遺伝子組み換えのトウモロコシと大豆を、一般の除草剤を使った従来農法で生産したものと比較したところ、単位面積あたりでも全米規模でみても、実質的な生産高の増加はみられなかったという。いくつかの害虫に耐性を持つバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensisBt)という細菌を利用して遺伝子を組み換えたトウモロコシの生産量増加率は高かったものの、過去13年間で年平均0.2-0.3%に過ぎなかったという。

 米国のトウモロコシ生産高は毎年平均約1%の割合で増加しているという。米農務省の詳しい統計によると、2004-08年の5年間の単位面積あたりのトウモロコシ生産高は、バチルス・チューリンゲンシスが登場する前の1991-95年の5年間より約28%も増加しているが、報告書はバチルス・チューリンゲンシスを使った遺伝子組み換え作物による増加寄与分は3-4%に過ぎず、残りの24-25%は従来型の品種改良などの成果だと結論している。(c)AFP