【1月31日 AFP】水草などに隠れている魚をおびき出すには、内気な魚とペアを組ませればいい――。科学誌『カレント・バイオロジー(Current Biology)』で29日に発表された、英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究チームによる魚の生態に関する研究で、そのような結果が判明した。

 研究チームが小型のトゲウオの生態について調べた結果、1匹の場合よりもペアでいる方が危険を冒して餌を探しに出てくることが多いとわかった。

 魚には集団防衛する傾向があることを考慮すれば、目新しいことではないかもしれないが、研究チームはさらに、トゲウオが「リーダー」と「部下」の役割に分かれ、内気な魚が部下に、勇敢な魚がリーダーになる傾向があるのを発見した。

 ケンブリッジ大のAndrea Manica氏は、「魚は行動的な過程でリーダーと部下の関係になることが分かった」とし、「個体は生まれつきリーダーまたは部下なのではなく、社会的な反応の結果でペアにおける役割は決まり、それは大きな集団にも当てはまるのではないかとわれわれは考えている」と述べた。

 研究チームはまず、安全地帯である水槽の底の水草を離れ、隠れる場所のない水槽上部の空間に餌をとるために出てくる魚を調べて、勇敢な個体と内気な個体を選別。次に不透明な仕切りを取り除いて2種類の魚が互いに見えるようにし、魚が水草の陰から出てくる頻度と順番を調べた。

 その結果、どの魚も餌をとりに出てくる回数がそれまでよりも大幅に増え、また常に同時に出てきたが、大半の場合は勇敢な方が先に出てきたという。

 最も内気な魚とペアを組んだ勇敢な魚は、陰から出てくる回数が著しく増え、内気な魚が水草に戻った後も、その場にとどまったという。

 リーダーシップは、多くの種類の動物がよく示す行為だが、魚の場合は、個々の魚がパートナーの動きに対しどのように反応するかで生じることが今回の研究で示されたと、研究チームは述べている。

 Manica氏は、「内気な個体が非常に勇敢な個体とペアとなったら、勇敢な方は内気な方を忠実な部下になろうという気にさせ、逆の場合も、非常に内気な個体は勇敢な相手のリーダーシップを引き出しているとみられる」と説明した。(c)AFP