【1月17日 AFP】米国と中国の研究者が15日、物体を視界から見えなくさせるための素材の開発に向けて、さらに一歩前進したと発表した。将来的には人類のテクノロジーに画期的な技術革新をもたらす可能性もある。

 米ノースカロライナ(North Carolina)州のデューク大学(Duke University)の研究者らによると、アルゴリズムと呼ばれる複雑な数学的手順の設計の進歩によって、研究チームが「メタマテリアル」と呼ぶ素材の開発に成功した。

 研究チームが16日の米科学誌「サイエンス(Science)」に発表した論文によると、このメタマテリアルは、「物体周囲の電磁波を物体後方に移動させることが可能で、あたかも何も存在していない空間を電磁波が通過したようにみせかけることができる」。

 研究チームのデービッド・スミス(David R. Smith)上級研究員によると、この遮へい現象は、暑い日に遠方に見える蜃気楼(しんきろう)のようなものだという。

「道路上に水のように見えるものが浮かんでいるのを見たことがあるだろう。あれは実際は空からの反射に過ぎない。この例では、蜃気楼が路面を遮へいしている。事実上、最新の遮へい素材で、われわれは蜃気楼を工学的に作り出しているといえる」(スミス研究員)

 研究チームは、2006年に試作品を作成してこういった素材が可能であることを実証し、米空軍科学研究所(US Air Force Office of Scientific Research)や中国の国家自然科学基金委員会(National Science Foundation of China)を中心に支援を受けていた。

 スミス氏は、最新の遮へい素材は、当初のものよりもはるかに性能が向上していると語る。「新素材は、当初の素材よりもはるかに幅広い、ほとんどどんな波長スペクトルでも遮へいすることができる。はるかに簡単に赤外線や可視光線に拡大することも可能だ」

 今回の成果は既存のありとあらゆるテクノロジーを進歩させるほどの可能性を持っている。また、今までに考案されたことのない技術を生み出す可能性もある。

「遮へい素材によって障害物の影響を取り除くことで、無線通信が向上する可能性がある。また、音響遮へい素材は、振動や音、地震波などの進入を防ぐ防護シールドとして役立つかもしれない」と研究チームは語る。

 この遮へい素材は、長さ50.8センチ、幅10センチのサイズで、奥行きは2.5センチ以下。グラスファイバー1万本が平行に並べられている。そのうち6000本は異なる形をしている。研究チームは独自開発のアルゴリズムにより、グラスファイバーの配列と形状が決定されたと説明した。(c)AFP

スミス研究員と新開発のメタマテリアルの写真