【12月23日 AFP】アフリカで誕生した人類が世界各地に広まっていった約6万年前当時、人口比率は男性が女性を大幅に上回っていた。このような研究が米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」に発表された。

 アフリカは「人類のゆりかご」として知られる。最近の複数の研究でも、アフリカ以外の大陸に住む人類の起源は、5-7万年前にアフリカから中近東を経て欧州その他に移動した比較的少数のホモ・サピエンスにあることが分かっている。

 だが、こうした「人類共通の祖先」の男女の人口比率を割り出す方法を示した研究は、これまで皆無だった。米ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のアロン・ケイナン(Alon Keinan)氏率いる4人の研究チームは、男女比を説くカギは地域ごとの遺伝情報の違いにあると考えた。

 男女の性差はX染色体とY染色体の組み合わせにより決定される。人間が持つ46個の染色体のうち、22対は男女で同一だが、残り2個の性染色体は、男性はXY染色体、女性はXX染色体となる。そのため、一定の人口における男女比は、X染色体の割合により推定することができる。

 また、数千世代にわたり突然変異が拡散していった速度は、常染色体における変異よりも、X染色体における変異に反映されており、したがってX染色体の割合は、突然変異の拡散速度を反映していると考えられている。
 
 研究チームは、X染色体の変異の速度が予想よりも速い場合、アフリカから移動した共通祖先の大部分は男性であるはずだという仮説を立て、アフリカ人の遺伝子構造を北欧人、アジア人のものと比較した。

 すると、X染色体の遺伝的浮動の大半は、非アフリカ人が西アフリカ人から分化したあと、そしてその後北欧人から東アジア人に分化する前の時期に加速されていることがわかった。「遺伝的浮動」とは、自然淘汰による変化とは異なる、遺伝子に起こる突然変異のことだ。

 アフリカを出た共通祖先の女性がたとえ少数でも、それらの女性がすべての子孫を産んだのであれば、男女比は均等になるとみられる。しかしケイナン氏は、その可能性は極めて低いとして、今回の発見は、人類学者らが狩猟民において唱えてきた学説、つまり、短距離の移動は主に女性、長距離の移動は主に男性が行ってきたという考えに合致したものだと主張している。(c)AFP