【11月15日 AFP】人間の脳は物事を決定する際、ギャンブルの配当を割り出すコンピューターのように、失敗から学ぶのと同じ方法で、他人の行動を考察して勝算を割り出すのだという。

 英科学誌「ネイチャー(Nature)」で12日発表された研究結果によると、英オックスフォード大学(University of Oxford)研究員のTimothy Behrens氏らの研究チームは、被験者に一連のテストを行ってもらい、脳の活動を観察した。

 その結果は、脳内のどの部分で、またどのようにして、決定がなされるかに関するこれまでの学説を反証するものであり、また、他人の行動が予測できないことが特徴とされている自閉症のメカニズムの解明につながる可能性もあるという。

 物事を決定する際の脳の動きについて、これまでの研究では、脳内で2種類の情報処理プロセスが行われるとされてきた。1つは同様の環境における自分自身の経験や、失敗または成功の記憶に基づいたものだ。脳は過去の失敗から学ぶ。つまり、間違いを犯した場合、何かを学び、次の行動を考え出さなければならない。

 もう1つのプロセスは、われわれは社会的動物であり、他人の言動に影響を受けるという事実に基づくものだ。これまで、この後者の、他人の行動から学習する際の脳神経の構造の方が、基本要素が「アメとムチ」である前者と比較してはるかに複雑だと広く考えられてきた。

 しかし、「それは違う」と、Behrens氏はAFPとのインタビューで述べた。「脳には、ある人がどれほど信用できるか、またはその人の言動をどの程度学ぶべきなのかといった社会的価値観を学ぶ能力があるが、それは『アメ』について学ぶ際に使用される、基本的な計算メカニズムと同様のものだ」と主張した。

 今回の結果は、脳が物事を決定する際、他人の行動から学習したことを、どのようにして取り入れるのかについて、その研究方法に変化を及ぼす可能性もあるという。(c)AFP