【11月6日 AFP】アフリカ人とアジア人の完全な遺伝情報(ゲノム)が、史上初めて解析(シーケンス)された。オーダーメイドのDNA解析という目標への重要な一歩となる。

 ゲノムの完全シーケンスはこれまで、欧州系の2人についてしか行われていなかった。この2人は、DNAの二重らせん構造を発見した米科学者ジェームズ・ワトソン(James Watson)氏と、米バイオ・ベンチャー企業セレラ・ジェノミクス(Celera)の設立者クレイグ・ベンター(Craig Venter)氏だ。遺伝性の病気や薬に対する感受性・免疫性と、人種の違いとの関連については謎が多かった。

 5日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された2つの研究は、それぞれ中国の漢民族と西アフリカのヨルバ人の男性のゲノムをシーケンスし、こうした謎の解明を目指す。

 それぞれ、DNA内の30億の塩基対を解読し、欧州系の2人分とあわせた計4人分のゲノムを解析・比較し、病気との関連性が疑われる遺伝情報の違いを同定する。

 新たなアフリカ系とアジア系の2人のゲノムは、イルミナ・インク(Illumina Inc、本社:サンディエゴ)と454 Life Sciences and Applied Biosystemsが共同開発したシーケンサーにより蓄積されている。

■目指す1000人分のゲノム図書館

 史上初のヒトゲノムの解析は、2003年にヒトゲノム計画(Human Genome Project)の下で行われた。費用は約3億ドル(約290億円)。ニューヨーク(New York)州バッファロー(Buffalo)の複数の匿名ドナーから採取されたサンプルを基にしたシーケンスは、1人の人間の遺伝情報というよりは、複数の人間の遺伝情報を寄せ集めたものだった。

 2007年、ベンター氏とワトソン氏のゲノムが短期間で解析された。費用は、各ゲノムにつき約100万ドルと低く抑えることができた。ベンター氏は当時、社長を務めていたセレラとヒトゲノム計画のゲノム解析競争のために自分のDNAサンプルを提供し、後に解読された自らのゲノムを公表した。

 バイオテクロノジーの各企業は、最終的にはシーケンシングのコストを1個人あたり数千ドル以内に抑えられることを目標としている。

 国際コンソーシアム「1000ゲノムプロジェクト(1000 Genomes Project)」では、現在はまだ4人分のこの「ゲノム図書館」に、将来的には世界の1000人以上のゲノムを蓄積し、それを基にヒトゲノムの分布図の作成を目指している。(c)AFP