【11月6日 AFP】高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)のウイルスは、感染時に抗原の一部を隠すため、ヒトの免疫系が病原体の侵入を感知できず、免疫反応が起きないとの米医大の研究チームの報告が、6日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された。H5N1の致死性の高さを説明するとともに、治療薬の開発につながる発見として期待されている。

 米テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)のベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)大学のプラサド(Venkataram Prasad)教授らの研究によると、H5N1のタンパク質の幾つかが、ヒトへの感染時にウイルスの遺伝物質であるリボ核酸(RNA)のらせん構造を覆い隠すチューブ状の組織を形成しているという。

 研究チームはこの発見で、H5N1ウイルスのヒト感染時の致死性の高さが説明できる可能性があると指摘。ウイルスのタンパク質の反応を食い止め、ヒトの自然免疫能を活かす治療薬の開発につながると期待を寄せている。

 H5N1の毒性の強さについては、これまでの研究でいわゆるNS1タンパク質が重要な役割を果たしていることがわかっている。

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)によると、H5N1ウイルスは2003年にアジアで初めて確認され、感染したとみられる患者のうち60%以上に相当する245人が死亡している。研究者らの間では、H5N1が最終的にヒト同士での感染力が非常に高いウイルスに変異し、世界的な大流行を引き起こす懸念が指摘されている。(c)AFP