【10月27日 AFP】遺伝子操作によって、抗がん作用があるとされる紫色のトマトの栽培に成功した英国の研究グループの研究結果が、英科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」(電子版)に26日、掲載された。

 研究チームは、キンギョソウに含まれるアントシアニン色素の2つの遺伝子を用いて、紫色のトマトを開発した。アントシアニンはブラックベリーやクランベリーなどの果物に多く含まれる紫の色素。これまでの研究で、がんや心疾患、糖尿病などに一定の効果があり、肥満や糖尿病を防ぐ可能性があることが分かっている。
 
 研究チームが紫色のトマトを実験用マウスに与えて抗がん作用を調査したところ、このトマトを与えたマウスは、普通のトマトを与えたマウスよりも大幅に寿命が伸びたという。

 こうしたことから、紫色のトマトの栽培研究は人びとの健康促進に貢献すると、英東部ノリッジ(Norwich)にあるバイオ技術研究機関ジョン・インズ・センター(John Innes Centre)のキャシー・マーティン(Cathie Martin)研究員は、研究の意義を語る。

 また、同研究は食生活による習慣病リスクの軽減と健康促進を示したメタボリックエンジニアリング(代謝工学)分野での初めての実例であるうえ、遺伝子工学を用いた食物が全消費者にとって有益となる
可能性を示唆した初めての例だという。

 マーティン氏らの研究チームは、次の研究段階として、アントシアニンを豊富に含む紫色のトマトを食すことによる人体への有効性を確認するため、被験者ボランティアを集めた前臨床データの収集を行う予定だ。

 米国では、20年以上も前から1日当り5種類の野菜や果物を摂取するよう米国立がん研究所(National Cancer Institute)が奨励してきた。だが、これを達成している米国人は4人に1人以下というのが現状だ。

 マーティン氏の説明では、こうした現実を考慮した結果、現在は野菜や果物が含む生物活性(バイオアクティブ)化合物の量を増やす研究に重点が置かれている。(c)AFP