【9月3日 AFP】夫婦間のもめ事の原因は男性の遺伝子にあるのではないか――。世の女性たちが常に抱えてきた疑惑を証明する研究結果がスウェーデンの研究チームによって発表された。

 スウェーデン・ストックホルム(Stockholm)のカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)の研究チームが、2日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表した論文によると、男性にみられるある遺伝子変化が、妻や恋人との関係の親密さの度合いに影響を与えることが分かったという。

 チームは、スウェーデン人男性の約4割にみられる「allele 334」と呼ばれる遺伝子変化と男女関係に問題が生じることの関連を国内の双子550組とそのパートナーや配偶者を対象に調査した。この結果、男女関係において、その遺伝的変異の複製を1つないし2つ持っている男性は、持っていない男性とは異なる行動をとることが多いことが分かった。

 統計的にみて「allele 334」はパートナーとの結びつきの感じ方に影響を与えており、その遺伝子の複製を2つ持つ男性が過去1年間に妻や恋人ともめ事を起こした割合は、持たない男性の約2倍に上ったという。

 研究チームの1人、Hasse Walum氏は声明で、「男女間でもめ事が起こる原因はもちろん多数あるが、男性のパートナーとの接し方に特定の遺伝子変化が関連付けられたのは初めて」と明らかにした。

 この遺伝子変化の有無の違いは女性側も感じ取っているようで、Walum氏によると、この遺伝子を持つ男性と結婚した女性は、持たない男性と結婚した女性と比較して、男性との関係に満足していないという。

 ただし、遺伝子変化の影響はそれほど強いものではなく、将来の関係における行動を正確に予測することはできないという。

 同研究所のMartin Ingvar教授(神経生理学)は調査結果を「非常に興味深い」とし、「今回の研究結果は、われわれのすべての行動が本能と学習の両面に影響されるという事実を初めて証明した。結婚などの複雑な文化的・社会的現象でさえ、個人の遺伝子の影響を受ける」と述べた。

 問題の遺伝子変化は、大半のほ乳類に見られるバソプレシンと呼ばれるホルモンの分子受容体の生成をコントロールするもので、この同じ遺伝子が雄の野ねずみの一雄一雌行動と関係していることは以前から判明していた。

 カロリンスカ研究所のチームは、人間関係におけるバソプレシンの影響をさらに詳しく調べれば、自閉症などの病気の原因解明に役立つ可能性もあるとして期待している。(c)AFP