【8月22日 AFP】抜歯した「親知らず」の幹細胞を用いた新型万能細胞(iPS細胞)の作成に産業技術総合研究所(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)が成功した。難病の研究に新たな道が開かれると期待される。

 3年前に10歳の少女が抜歯して冷凍保存されていた「親知らず」から取り出した細胞を35日間培養して、iPS細胞を作成することに成功したという。

 今回の成果について、研究を主導した大串始(Hajime Ogushi)主幹研究員は22日AFPに対し、通常は捨ててしまう抜歯された歯を用いたことで、胚性幹細胞につきまとう倫理面の問題が解決されたこと、そして冷凍保存が可能で、保存して必要に応じて使用できるという2点で意義があると説明した。

 大串研究員によると、今回の方法で作成したiPS細胞が、先天性骨形成不全症の治療など臨床に応用できるまでには少なくとも5年は必要だという。

 これまでの胚性幹細胞(ES細胞)研究は受精卵を用いたことから、倫理面や宗教面での論争の的となってきたが、山中伸弥(Shinya Yamanaka)京都大教授や米国の科学者らが前年、皮膚の細胞を用いたiPS細胞作成に成功。ES細胞研究に倫理面から疑問を呈していたローマ法王庁やジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領らも賛同している。(c)AFP