【6月12日 AFP】(一部修正)アルツハイマー病を引き起こす原因とされているタンパク質に対し、「二段戦法」で効果のある試験薬を開発したと、研究者チームが11日、発表した。

 現在まだ臨床試験中のこの試験薬は、γ(ガンマ)セクレターゼモジュレーター(GSM)と呼ばれる種類の薬剤。しかしこれまで、なぜこの分子化合物がアルツハイマー病に効果があるのかは、ほとんど知られていなかった。

 GSMが標的とするのは、脳内に蓄積すると健忘や認知障害といったアルツハイマー病の症状を引き起こすアミロイドβ(ベータ)タンパク。欧米の科学者29人のチームは、GSMが注目すべき2つの働きをしていることを発見したと、英科学誌ネイチャー(Nature)で報告した。
 
 GSMは凝集するアミロイドβが長いアミノ酸残基を形成することを抑えるだけでなく、より長いアミノ酸残基同士がつながることを阻害する短いアミノ酸残基の生成を促進した。また研究チームは、すでに脳内に存在するアミロイドβにGSMが結合し、さらなる凝集も阻害することを発見した。

 アミロイドβは、より大きなタンパクであるアミロイド前駆体蛋白(APP)が酵素によって切断されて生成される。しかし、同チームはこれまでの予測に反して、GSMは酵素は標的とせず、アミノ酸残基やたんぱく質自体を攻撃することで効果を発揮することを発見した。アミロイドβに対しては薬剤が有効でないと考えられていたため、今回の発見は朗報となった。

 アルツハイマー病は加齢に伴う疾患だが、遺伝的要素も強く持ち合わせているとされ、少なくとも3つの遺伝子の変異体が誘発要因とみられている。

 現在世界のアルツハイマー患者は2400万人だが、2020年には4200万人、2040年には8100万人に達すると推計されている。(c)AFP