【5月26日 AFP】中国南西部で今月発生し、6万人を越える死者を出した四川大地震のような巨大地震が、地球の裏側に別の地震を引き起こす可能性があることを指摘する研究が25日、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に発表された。

 研究チームを率いた米地質調査所(US Geological SurveyUSGS)のトム・パーソンズ(Tom Parsons)氏は、この発見が余震の頻度や強さの予測精度の向上につながる可能性があると期待している。

 米国の地質学者チームは、1990年以降にマグニチュード7.0以上を記録した15の地震のうち12の地震で、発生した表面波が別の大陸の断層系に、より小規模の地震を誘発していたことを発見した。

 四川大地震はこの研究に含まれていないが、例えば2004年12月のインドネシア・スマトラ沖大地震の際には、米アラスカ(Alaska)州からカリフォルニア(California)州沿岸、さらにはエクアドルで地震活動が誘発されていたことが分かった。

■大地震直後の遠隔地域の地震発生率、95%以上

「このように表面波が伝播することは知られていたが、こうしたいわゆる動的誘発による地震は特殊なケースだと考えられていた。しかし驚くべきことに、実際には常に、どこででも起こっていた。」とパーソンズ氏は説明する。

 調査によると大地震が起こった際、震源地から遠い地域では、本震発生のしばらく前あるいはしばらく後よりも、発生直後に誘発地震が起きる確率のほうがずっと高く、しかも95%以上とほぼ確実に近い割合で起きていた。これらの誘発地震の規模は通常マグニチュード3から5程度だが、引き金となった地震と同規模になりえないという保証はない。

■誘発地震のほうが強いケースも

 パーソンズ氏は以前の研究ですでに過去25年のデータから、マグニチュード7.0以上の地震が、それよりも震度の強い地震を引き起こしたケースを8例見つけており、「どんな規模もありうる」という。

 研究チームは、世界500か所に設置された広帯域地震計の観測データを分析し、大きな地震のあとに、その地震が原因とみられる遠隔地の地震の回数が急増していることを突き止めた。最初の大地震と誘発された地震の発生地が別の大陸プレートに属する場合でも、この傾向は変わらなかった。

 パーソンズ氏によると、こうした誘発地震の発生メカニズムについて静的誘発と動的誘発の2つの理論があるが、静的誘発の影響は100-200キロを超えるとたいていは消滅するため、大地震から遠く離れた地域での地震活動の激増は、振幅を保ったまま長距離を伝播した地震波によって引き起こされたと考えなければ説明できないという。
 
 四川大地震のような巨大地震が引き起こす地震を予測するためには、静的誘発と動的誘発の影響をそれぞれ考察することが必要だという。

「余震を観測できるようになって徐々に理解が深まりつつあるが、余震のうちどの程度の割合が動的誘発によって引き起こされているのかを知る必要がある。その影響は永続的ではなく、一時的なものだからだ。これらの地震波が去ってしまえば、もはや本震の影響は去ったとみなして、一応安心することはできる」 (パーソンズ氏)(c)AFP/Marlowe Hood