【5月11日 AFP】腹を空かした孤児に食料を分配する必要にせまられた場合、人は分配の「効率」より「公平」を重視する傾向が強いとの研究成果が8日、米グループによって発表された。

 研究を行ったのはイリノイ大学(University of Illinois)とカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)の合同グループ。

 実験では、一部の子どもが食べ物を得ることができない可能性があっても分配した食料すべてが消費される「効率」を重視した方法よりも、たとえ少なくても孤児全員に一様に食料を分配する「公平感」がより好まれることが確認されたという。

 選択肢は「分配の公正」に関わるもので、被験者が公平感と効率のどちらかを重視するかを調べたもの。

 実験中、被験者はコンピューターの画面で腹をすかせた子どもの写真を見ながらプログラムを操作し、それぞれに食料を自分の判断で分配する作業を行った。

 画面上では、効率を重視して一部の子どもに食料を分け与えた場合食料を受け取れる人数が減り、全体に配った場合は一人当たりの量が格段に減るとする警告が現れる。

 結果、圧倒的大多数が分配効率が悪いながらも公平な分配を選択した。研究者の1人であるMing Hsuさんは、被験者が不公平に対する反感を顕著に示したと述べている。

 Mingさんはこの研究結果が、道徳がどのようにして形成されるかや極限状態で人がどのように得失評価を行うかについて理解を深めると解説する。

 ちなみに、厳しい選択を迫られるこの実験は被験者にとって相当つらかったらしく、実験後には「今までで最悪の実験。もうたくさん」との声が多く聞かれたという。(c)AFP