【4月17日 AFP】科学好きな人や自我の強い人にとって、自分の遺伝子コードを解読することは、ポケットの奥深くにしまった夢だったかもしれない。

 英科学誌ネイチャー(Nature)4月17日号で説明された新技術は、約30億の塩基対で構成されるゲノム(全遺伝情報)のシーケンシング(塩基配列の読み取り作業)にかかる費用と時間を大幅に削減することができるという。これは患者1人1人に対するテーラーメードの薬を作る上で重要なステップとなる。

 公的機関に所属する科学者からなるコンソーシアム、ヒトゲノム計画(Human Genome ProjectHGP)は2003年、迅速なシーケンシング手法を開発した米国のクレイグ・ベンター(Craig Venter)氏とは違う手法を使ってゲノムのシーケンシングを行った。これには4億3700万ドル(約445億円)の費用と13年の歳月が費やされた。

 その後、ベンダー氏自身が自分のゲノムのシーケンシングを実施。前年9月に完了したこの作業には、約1億ドル(約102億円)の費用がかかった。

■「DNAを直接増幅」

 一方、米非営利組織Rothberg Institute for Childhood Diseases Researchは、次世代の技術を用い、DNAの二重らせん構造の発見によりノーベル賞を受賞した米科学者ジェームズ・ワトソン(James Watson)氏から提供されたサンプルのシーケンシングを行った。費用は総額100万ドル(約1億200万円)、時間は2か月と、上記2つの実験よりも大幅に短かった。

 この「次世代の技術」とは、従来行われてきたようなバクテリアのサンプルのクローニングではなく、「ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reactionPCR)」と呼ばれる手法を用いてDNAを直接増幅する。

 この迅速で安価な手法は「『個別のゲノム』と『個別の薬』を結びつける技術において重要な試金石となる」と研究は指摘する。

 遺伝的疾患を伝えたり、がん、ニコチン中毒、肥満、アルコール依存症などのリスクを高めたりする欠陥のある遺伝子を特定するために、遺伝子コードの解読が盛んに行われている。将来的には個人のゲノムに合わせ、効果を最大に引き出し、副作用を最小に抑えるテーラーメードの薬の製造につながることが期待されている。(c)AFP