【3月5日 AFP】米航空宇宙局(NASA) は4日、火星の地表で発生した「雪崩(なだれ)」をとらえた初めての写真を公開した。

 この画像はNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス(Mars Reconnaissance)」に搭載された、高解像度科学実験撮像装置(High Resolution Imaging Science ExperimentHiRISE)が2月19日に撮影したもの。細かな氷片やちりのほか、地表の断崖から削り取られた岩石などを含む大量の物質が斜面を落下しているのがわかる。

 NASAの調査員らによると、写真撮影の目的は季節的変化をとらえるだったため、雪崩の様子を撮影できたのは予想外のことだったという。

■偶然の発見

 NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion LaboratoryJPL)でHiRISEの副主任調査員を務めるCandice Hansen氏はウェブサイト上で、「砂丘を覆っている凍った二酸化炭素(CO2)の春季の変化を観察していた。雪崩をとらえたのは偶然だった」としている。

 最初に雪崩に気付いたのは、カメラの調整を支援し、数百枚の画像を調査してきた米アリゾナ大学(University of Arizona)のIngrid Daubar Spitale氏だった。

「われわれが火星で見るものの多くは数百万年変化していないものがほとんどなので、こんなにダイナミックなものが見られるとは本当に驚いた」と同氏は語る。

 いまのところ雪崩の原因は分かっておらず、この現象が年間を通じて起こるものなのか、春先だけに起こるものなのかを調査するために、さらに写真を撮影するという。

■水循環の解明に期待

 調査員らは今後数か月同じ場所で撮影した写真を調査することで、雪崩のどの程度を氷が占めているのかを推計し、火星の水循環の解明につながればと期待を寄せる。

「塊や破片が小さくなるかどうかを確認する。もし氷の塊が緩んで落下すれば、火星の水分は固体から気体に変化すると推測することができる」とスイス・ベルン大学(University of Berne)のPatrick Russell氏は説明する。

 NASAは4日、三日月型の青い地球や月、火星の印象的な渓谷や砂丘の模様など約2400枚の画像を公開した。マーズ・リコネッサンスは2年前に火星に到着して以来、そのほかの火星探査ミッションすべてを合わせたよりも多くのデータを地球に送っている。(c)AFP