【3月3日 AFP】日本で誰かにウインクされても、あまり深い意味には取らないほうがいい。ウインク一つで、米アップル(Apple)携帯音楽プレーヤーiPodを操作できるシステム、「こめかみスイッチ(Kome Kami SwitchTemple Switch)」を開発したと、大阪大学(Osaka University)大学院基礎工学研究科の谷口和弘(Kazuhiro Taniguchi)研究員が発表した。

 シングルチップのコンピューターと光学式センサー数個で構成される「こめかみスイッチ」は、こめかみの動きを読み取る。眼鏡の内側などに組み込める極小のシステムだ。

■「第3の手」、宇宙から福祉にまで活用の可能性

 両目を1秒間閉じるとiPodがプレーを開始し、もう一度同じ動作をすると停止する。右目だけでウインクすれば次の曲をスキップし、左目で前の曲に戻る。

 介護やロッククライミング、バイクの運転といった両手のふさがっているときにも、このシステムが「第3の手」となりうる。宇宙飛行士や身体に障害を持つ人にも活用される可能性がある。

「こめかみスイッチ」は意図的なウインクと自然なまばたきを区別できると、開発した谷口氏はいう。「まぶたをしっかり閉じたときだけシステムが信号を拾うので、誤作動を心配する必要はない。食事中や誰かと話しているときでも使える」。普通のまばたきは非常に素早く軽い「省エネ式」だが、このシステムの作動にはもっと固く目をつぶる必要がある。

 片目でウインクをできない人もいるが、そうした場合は素早いウインク2回で反応するようプログラムすることも可能だという。

■「究極の遠隔操作」目指す

 また、「こめかみスイッチ」はテレビセットやエアコン、部屋の電気といったさまざまな家電に応用できる可能性もある。

 谷口氏は携帯電話や車椅子、ロボットなどに「こめかみスイッチ」が採用され、毎日の生活の中で使われる「究極の遠隔操作」になることを夢見ている。

 これまでに開発されてきたまばたきによって器具を操作する装置は、ユーザーの目の前に装着しなければならないセンサーが邪魔だったという。

 谷口氏の研究チームは2、3年以内にベンチャー事業を立ち上げ、「こめかみスイッチ」の商業化に取り組みたい意向だ。「こめかみスイッチ」は、谷口氏が研究中の歯をかみしめることで操作するシステムの応用の一つだ。 (c)AFP/Miwa Suzuki