【2月14日 AFP】空飛ぶほ乳類コウモリが進化の過程で先に発達させたのは、超音波を発する器官ではなく、翼だとする研究結果を、米自然史博物館(American Museum of Natural History)の科学者たちが13日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 コウモリの特徴は、翼を持って空を飛ぶことと超音波を発することだが、進化の過程でどちらの特徴が先に現れたのかは、長い間議論の的だった。しかし、2003年に米ワイオミング(Wyoming)州グリーンリバー(Green River)で始新世初期(約5200万年前)の地層から見つかった、ほぼ完全な形のコウモリの化石を調べた結果、翼の進化が先だったと考えられるという。

 米自然史博物館(American Museum of Natural History)のナンシー・B・シモンズ(Nancy B. Simmons)博士らは、グリーンリバー(Green River)で見つかった新種の化石を、特徴的な足の部分からラテン語で「かぎ爪を持ったコウモリ」という意味の「Onychonycteris finneyi」と名づけた。コウモリの仲間としては最古のものと見られている。

 この化石の形態を調べたところ、大きなかぎ爪と原始的な翼の骨格を持ち、太い尾を持っているが、超音波を聞き取る内耳の蝸牛が未発達だった。

 蝸牛が未発達だったことから、「Onychonycteris finneyiは超音波を使わずにエサを探していたと見られる。しかし、歯の形態から主食は果物ではなく昆虫だったと考えられるという。

 共同研究者で、カナダのロイヤル・オンタリオ博物館のケビン・シーモア(Kevin Seymour)博士は、「もしも超音波を使っていなかったとしたら、エサの昆虫をを探すために何か別の方法を使っていたはず」だと話している。

 グリーンリバー(Green River)では同時代の地層から1960年に、別種の化石が見つかっているが、こちらはより現在のコウモリに近い形態だった。シーモア博士は、コウモリの進化過程を探るために、さらなる研究が必要だとしている。

 世界には現在、約1000種以上のコウモリが生息し、すべてのコウモリが超音波を発して行動できる。しかし、大型コウモリの中には、嗅覚や視力でエサを探す種類もおり、超音波を使わず暮らしている。(c)AFP