【2月12日 AFP】 イタリアの国立核物理学研究所(Istituto Nazionale di Fisica NucleareINFN)は11日、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)と同時代の人々の毛髪を分析したところ、いずれも同程度に高濃度のヒ素を検出したことから、ナポレオンは毒殺されたという通説に反し、ヒ素中毒で亡くなったとは考えられないと発表した。

 INFNは、イタリアとフランスの博物館が保管する、ナポレオンの少年時代やエルバ(Elba)島流刑時代、セントヘレナ(Saint Helena)島で死去した際の毛髪を分析。同時に、ナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌ(Josephine)、2番目の妻マリー・ジョセフィーヌ・ルイーズ(Marie Josephine-Louise)との間に生まれた息子ナポレオン2世(Napoleon II)、さらに比較対象として現代人の毛髪を調べた。

 微量な試料を破壊せずに元素を調べることができる中性子放射化分析法を使って分析した結果、ナポレオンの毛髪と同濃度のヒ素がほかの人物の髪からも検出された。

 INFNは「200年前の人々の髪には、現代人の髪に含まれている量の100倍以上ものヒ素が含まれていた。ナポレオンにも同時代の人々にも、現代では中毒と見なされる濃度のヒ素が検出されたが、当時としては不自然なことではない」と述べた。

 今回の分析結果は、ナポレオンが「恒常的にヒ素を摂取していた」ことを示しており、「検出されたヒ素は中毒死するほどの量ではない」と結論づけている。

 ナポレオンは1821年5月5日に51歳で死去。死因は特定されておらず、ヒ素による中毒死や胃がんなどが挙げられている。(c)AFP