【1月31日 AFP】約140億年前のビッグバンを機に始まった宇宙の膨張は、なぜ加速しているのか――。宇宙最大の謎の1つとされるこの宇宙の加速膨張を解明することになるかもしれない研究結果が、30日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 10年前、宇宙の膨張が加速しているという事実は天文学者たちを驚かせた。それまで長い間、宇宙の膨張速度は銀河間に働く引力によって減速すると考えられていたからだ。

 この事実を説明する、極めて対照的な説が2つある。1つは、宇宙はいわゆる「暗黒エネルギー」に満たされているとする説。暗黒エネルギーは光も放射線をも放出も反射もしないため、現在の技術では捕らえることはできない。このエネルギーは銀河間に作用して宇宙の膨張を減速させる引力の影響を弱める働きをする。

 もう1つは、暗黒エネルギーが存在しないとする説。これが存在しない場合、重力を宇宙の原動力とする現在の数々の理論には欠陥があることになる。このような理論は、宇宙にさらなるエネルギーが存在する場合にのみ成り立つからだ。

 これまでの観測では、どちらの説も裏付けらていなかった。

 ところが、イタリアのブレラ天文台(Astronomico di Brera)のLuigi Guzzo氏率いる、天文学者51人からなる国際研究チームは、この謎を解明できるかもしれないとしている。

 研究チームは、ヨーロッパ南天天文台(European Organisation for Astronomical Research in the Southern HemisphereESO)がチリのセロ・パラナル天文台(Cerro Paranal)に設置した口径8.2メートルの大型望遠鏡(Very Large TelescopesVLT)4基のうちの1基をX線を測定する分光器として用い、30年間にわたり、約1万の銀河の分布と動きを測定した。

 観測の目的は、銀河を互いに引き離して宇宙を膨張させる力と銀河同士を引き寄せる力の間で行われている「宇宙の綱引き」での巨大な力を見極めることだ。

 間接的に銀河の移動速度を測定することで、膨張する宇宙の3次元マップの作成に成功した。これにより、銀河内部そのものの動きも分かる。

「宇宙の歴史上の異なる時期の変化を測定することは、暗黒エネルギーの性質を確かめる方法の1つだ」とLaboratoire d'Astrophysique de MarseilleOliver Le Fevre氏は説明する。

 観測結果は、決定的なものとはいえないまでも、宇宙膨張の加速を説明する「暗黒エネルギー存在説」と一致した。

 次の段階では、これまでの10倍の回数の観測を行うという。

 Guzzo氏は「こうした観測によって、宇宙の加速が暗黒エネルギーによるものなのか、それとも重力の法則の変更が必要になるのかが判明するはずだ」と述べている。研究チームの直近の調査によると、宇宙のエネルギーの73%は暗黒エネルギーで構成されているという。(c)AFP