【1月15日 AFP】汚染大気下にさらされたマウスの精子の遺伝子突然変異発生率が、そうでないマウスに比べると60%も高いことがわかった。14日の米科学アカデミー紀要(PNAS)に研究成果が発表された。

 実験は、カナダのオンタリオ(Ontario)州ハミルトン(Hamilton)の製鋼所と主要高速道路の風下で行われた。マウスを2グループに分け、1グループは未ろ過の大気下に、もう1グループには高性能HEPAフィルターでろ過した大気下に置き、3週間後と10週間後に両グループの状態を評価した。その結果、未ろ過の大気下に置かれたマウスは、ろ過した大気下に置かれたマウスに比べ、精子のDNA損傷率が高かったものの、大半が6週間後には回復した。

 ところが、「タンデムリピート(縦列反復配列)」と呼ばれるDNA損傷形式の発生率が高いことで知られるDNAのある領域を調べたところ、精子の突然変異発生率が極めて高いことが分かった。

 採取された精子が実験期間中は幹細胞として機能していたこと、通常このような突然変異に対する精子の耐性は高いことなどから、研究チームはマウスの精子幹細胞は粒子状物質による大気汚染に対して脆弱(ぜいじゃく)だと結論づけた。

 研究チームは、「化学汚染が遺伝的変異を引き起こす可能性が実験結果により示唆された」としながらも、「さらなる調査により、この結果を裏付け、粒子状物質による大気汚染がヒトに及ぼす影響を評価する必要がある」としている。(c)AFP